人呼んで「怪奇館」、有名老舗旅館を舞台に積水ハウス、63億円の詐欺被害

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「63億円」は戻ってこない

   「IKUTA HOLDINGS」のような存在は、「地面師」と呼ばれる。他人の土地や建物を利用して、持ち主の知らないうちに本人になりすまして不動産を勝手に転売して代金をだまし取ったり、担保に入れて金を借りたりする。

   積水ハウスが土地を購入したIKUTA HOLDINGSは、「海喜館」の本来の所有者と積水ハウスの売買を仲介する役割を装った。もちろん、「海喜館」の所有者とは一切関係がなく、取引すらなかった。IKUTA HOLDINGSは偽造書類などにより、積水ハウスに「海喜館」を売り、まんまと63億円を騙し取ったということだ。

   さらに、IKUTA HOLDINGSは、登記簿上の本店を永田町としており、その場所は元衆議院議員の小林興起氏の事務所となっている。ただし、小林事務所はIKUTA HOLDINGSとの関係を否定している。表札一つあるわけではなく、実態の乏しいペーパーカンパニーのようなのだ。

   積水ハウスでは、「何らかの犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、直ちに顧問弁護士によるチーム体制を組織のうえ、捜査機関に対して被害の申し入れを行った」。同社では、「捜査上の機密保持のため、これ以上の詳細の開示は差し控える」として、捜査の行方を見守る姿勢だ。

   被害額も確定していなことから、同社では今のところ、この事件関連での損失計上は見送っている。2018年1月期の業績予想も修正していない。関係者は、「事件の全貌がわかり、被害額が確定しないと経理面でも経営面でも何もできない」とコメント。そのうえで、「今後は不動産取引ルールの再点検を実施し、再発防止に努めていく」としている。

   一方、警察関係者は、「事件関係者の面はほとんど割れている(人物の特定はできている)。事件の全容解明もそれほど先のことではないだろう。しかし、金が戻ってくる可能性は小さいだろう」という。

   不動産のプロである大手不動産会社が被害者という非常にめずらしくもあり、お粗末な詐欺事件。事件の全容解明が待たれる。(鷲尾香一)

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