関節や軟骨に含まれる成分である「グルコサミン」は、経口摂取すると関節炎によるひざなどの痛みが緩和できるとされ、サプリメントの中でも特に名前が知られている。
しかし、その有効性には医師や専門家から疑問の声が出ており、国際変形性関節症学会(OARSI)や米国立衛生研究所(NIH)は最新のひざの痛みの治療ガイドライン上で「グルコサミンの有効性は全面的に失われている」と効果を否定している。
ただし、個々人の条件の違いによって効果に差が出ている可能性もあり、複数の条件を検討した分析が求められていた。
プラセボよりも効果なし
今回、オランダのエラスムス大学メディカルセンターやユトレヒト大学メディカルセンター、英ノッティンガム大学、キール大学、スウェーデンのルンド大学など欧州の複数の整形外科医らが共同で、2017年7月28日に英国医師会誌電子版で発表したのは、「ランダム化比較試験」という精度の高い試験6件の分析だ。
ランダム化比較試験はある成分の効果を検証するために行う試験で、医薬品の効果検証などではよく行われる。ここから導かれる結果は、非常に根拠の質が高いとされている。
今回は1994~2014年の間に実施された、グルコサミンを飲んだ場合と飲んでいない場合を比較した試験で、被験者数が1600人以上、変形性関節症の重症度や年齢、BMI、性別など異なる条件での効果の違いを、3か月程度の短期間から1~2年以上の長期間、厳密に調査したものに限定。
さらに、バイアスがかかることを防ぐため、サプリメントを製造している企業から研究資金を提供されている研究は除外した。
分析の結果、すべての研究でグルコサミンにひざの痛みに関する効果はまったく確認されなかった。
また、変形性関節症の重症度や炎症の状態、年齢、肥満や過体重といった諸条件ごとに分析しても、やはり何も効果はなかった。6件のうち5件の研究はグルコサミンを飲むグループと、グルコサミンではない偽薬を飲むグループに分けて比較をしているが、偽薬の効果が高い例すらあったという。
効果はないうえに副作用が
研究にあたったエラスムス大学のシータ・ビエラ・ゼインストラ博士は8月10日付のロイター・ヘルスの取材に対し、グルコサミンの効果を示す研究の多くは企業からの資金提供が行われており、そのほとんどはデータが伏せられていたとコメント。中にはデータが消されて確認できなかったものもあったという。
今後も検証は続ける予定で、5年おきに新たな比較試験のデータを集めるため、世界中の研究者に協力を求めている。
効果がなくても無害なら、それで本人が満足するからいいのではという考え方もできなくはない。しかし、ビエラ・ゼインストラ博士はグルコサミンにも胸やけや眠気、頭痛、アレルギー反応、体重増加、下痢、腹痛といった副作用があることは確認されているとし、次のように指摘していた。
「確かにグルコサミンは天然製品で食品と同じでリスクは低いが、潜在的な副作用はあります。そのうえひざの痛みに有益であるという証拠はほとんどない以上、経口摂取を控えるほうがいいでしょう」