日に焼けた肌の上を、一筋、また一筋と水滴が伝った。「あっ、不動の応援団長にも涙......」――実況アナウンサーが叫ぶ。
広陵(広島)の「怪物」中村奨成捕手(3年)が一大会最多本塁打記録を達成した2017年8月22日の夏の甲子園(全国高校野球選手権)準決勝だが、敗れた天理(奈良)のある生徒に、いま注目が集まっている。
声も出さず、仁王立ちで団長は応援
その生徒は、応援団長を務めた木村虎之亮さん(3年)だ。
春夏合わせて50回以上の甲子園出場を誇る強豪・天理の応援団には、あるしきたりがある。それは応援団長が「一切言葉を発さず、動きもしない」(読売新聞大阪版、8月19日付朝刊)ことだ。袴(はかま)姿の団長は、試合が始まると腕組みをして仁王立ちになり、終わるまで一言も発しないまま、じっとグラウンドを見守るのである。
18日の神戸国際大付戦のNHK中継では、その姿が放映された。アナウンサーを前にしても、木村団長は視線を動かすことなく、口を真一文字に結んだままだ。一方、後輩がストローの付いたお茶を差し出すと、無言のままそれを口にくわえて水分補給する、という微笑ましい場面も。アナウンサーが紹介したところによれば「何十年も前から」続くスタイルで、「なぜ始まったのか、いつから始まったのか」もはっきりわからないという。
岩本勉さんも「男前過ぎるぜ」
「不動の応援団長」は、テレビ中継などを通じて話題を呼んでおり、ツイッターでは「めっちゃ男前でかっこいい」といった書き込みが続出するなど、以前から注目を集めていた。
そして迎えた22日の準決勝、中村捕手が2本の本塁打を打ち、清原和博氏の記録を塗り替えるなど広陵が激しく攻める一方、天理も9回に3点を挙げて3点差まで食らいつく。しかし最後は空振りに打ち取られ、ベスト4で敗退となった。
NHKなどのテレビ中継ではその直後、スタンドの木村団長が大映しとなった。仁王立ちのまま、しかし顔をゆがませて、涙をあふれさせる姿だ。ツイッターでは、
「不動の応援団長が泣いた......」
「こっちまで泣けてくる」
「男泣きめっちゃかっこいい」
などと、「もらい泣き」が続出する。元日ハムの野球解説者・岩本勉さんも、
「天理高校の応援団長!格好良すぎるぜ!涙もらったわ」
「アカン、応援団長のハートが男前過ぎるぜ!」
球児たちの頂点を決める決勝戦は23日、天理を破った広陵と、花咲徳栄(埼玉)との間で争われる。