2017年の夏、東日本や北日本では予想外の冷夏、長雨となっている。東京都では8月20日まで、20日間続けて雨が降った。
猛暑の日々から解放されて過ごしやすい面もあるが、日照時間が極端に少なくなっており、体への影響が心配だ。
精神安定物質の分泌量が減る
東京と仙台の8月前半の日照時間は、過去半世紀で最も少ないと、日本気象協会が8月17日にウェブサイトの投稿で指摘した。8月1日~16日の東京都心の日照時間合計は、32.6時間。仙台に至っては12.2時間しかなかった。東京の場合、この時期の平均時間は100.4時間だから、3分の1に満たない。ツイッターでは、天気が悪い毎日を過ごしている地域の人から体調不良を訴える投稿が見られる。
日照不足が体に悪影響をもたらすかもしれない。その可能性として指摘されているのが、うつ病だ。本来、日本で日照時間が少なくなるのは冬。そのため冬に発症する季節性のうつ病は「冬季うつ病」と呼ばれる。
複数の専門サイトが症状を説明している。例えば「三田こころの健康クリニック新宿」のサイトでは2017年5月1日付(最終更新日)投稿で、「秋から冬にかけての病相期には、夕方から増強する抑うつ症状とともに、食欲亢進、炭水化物過食、体重増加、睡眠の増加(過眠)など『非定型の病状』がみられるとされます」としている。
日照不足は、脳内神経伝達物質「セロトニン」に影響するようだ。セロトニンは精神安定に必要な物質で、日中に日光を浴びることで分泌が増す。日照不足だと分泌量が減り、精神的に不安定になりやすくなると考えられる。
「冬季うつ病」と名付けられている病気なら、今の時期は心配ないはずだ。だが2015年2月10日付の「ナショナルジオグラフィック日本版」記事の中で、医学博士の三島和夫氏は冬季うつ病について、「春先にいったん症状が改善しても、梅雨に再燃することもある。さらに言えば、春でも夏でも天候次第で気分が悪くなることがある」としたうえで、「冬に特異的に発症するうつ病なのかと問われれば、答えは『NO』。冬に症状が悪化する可能性の高いうつ病なのかと問われれば、答えは『YES』。すなわち冬季うつの冬季とは、冬に症状が出現しやすいといった程度の意味合いなのだ」と説明している。
日光を浴びる機会が極めて少ない今夏の東京では、要注意かもしれない。
気象病は古傷の痛み、心筋梗塞、脳出血まで
日本気象協会のサイト上で、2017年8月1日以降の天気図を確認すると、日本列島は連日、低気圧が接近していた。この間、北日本から東日本にかけては、夏空をもたらす太平洋高気圧は全く存在感がない。8月5日~9日には、台風5号がゆっくりと通過し、各地に大雨をもたらした。
低気圧がもたらす健康への影響として近年注目されているのが、気象病だ。J-CASTヘルスケアでは2016年8月29日付の記事で触れている。原因として「気圧の急激な変化による自律神経の乱れ」を挙げた。
気象病に関して言及しているサイトのうち、湧永製薬の説明を一部引用しよう。代表的な症状だけでも「古傷の痛み、頭痛、関節リウマチ、神経痛、狭心症、血栓、尿路結石、気管支喘息、心筋梗塞、脳出血、感冒、胆石、急性虫垂炎」と多い。発症のメカニズムは先述した自律神経の乱れという説以外に、気圧の急激な低下で「体内にヒスタミン又はヒスタミン様物質ができて、体内の水分が貯留し、平滑筋の収縮、血管の透過性、炎症反応が増強されるため、気象病が誘発される」説、さらに急激な気象の変化を「ストレス」ととらえてしまう説が挙げられている。
相手が天候だけに、原因を取り除くのは不可能だ。発症予防のために、気圧の変化を原因とするむくみへの対策、また規則正しい生活や適度の運動で、気圧の変化に負けない体づくりを勧めている。