患者の不安を解消するのも治療
正木医師が対面診療を重視するのは診察方法だけが理由ではない。AGAで悩む患者は他人からどう見られているのかに悩んでおり、対面診療によって直接向き合うことでどのような状態に見えているのかを誠実に伝えなければ、「患者の不安」という根本的な問題が解消されないのだ。患者は髪が薄くなることで他人から馬鹿にされているのではないか、友達に笑われるのではないかといった、社会から拒絶される恐怖と戦っている人も多い。
「大きな不安を抱える患者様に対してディスプレイ越しに頭部を眺めて『大丈夫ですよ』と言うのと、対面診療で詳細に確認し『大丈夫ですよ』というのでは、患者様が感じる言葉の重みがまったく違います」
銀座総合美容クリニックでは1か月おきを目安に定期的な通院する患者が多いが、もともと仕事などが忙しく来院が難しい場合、一定期間分の治療薬をまとめて処方するケースもあるそうだ。しかし、そう提案しても「なんとか時間を作って診察を受けたい」と希望する人が少なくないという。患者としても医師と直接会いたいという思いが根底にあるのだろう。
確かにAGAに限らず、病気になったときに病院に行く際には、「治療をうける」ことがもちろん一番の目的だが「不安を解消し安心したい」という気持ちも根底にある。ろくに診察もしてもらえず病名だけ告げられ、処方箋を渡されるだけでは不安は増大するかもしれない。
見た目という繊細な問題だからこそ、正木医師は患者の不安にしっかりと耳を傾けて、不安が解決できる提案や不安を和らげる方法を考えることに重点をおき診療を行うという。
「不安が強い患者様はご自身の症状を実際よりも過剰に悪く認識してしまうケースも多く、たとえ髪が増えていても気がつかないケースもあるのです。定期診察では様々な角度から撮影した写真や、医師が客観的に見た正確な状態を理解していただくことが重要なのです」
こうして医師から直接自分の毛髪の状態を告げられ、「もう毎月来なくても大丈夫ですよ」と医師に言われても、「わかりました」と自信を持って言える状態になれば、不安が解消されたということなのだろう。