安全資産といわれる「金」の価格が高値で推移している。北朝鮮の朝鮮中央通信が米領グアム周辺を攻撃する計画を作成する方針を発表したことをきっかけに、「有事の金」買いの動きが一気に拡大した。
2017年8月9日の米ニューヨーク金先物相場は2か月ぶりの高値に急上昇。直近の18日(時間外取引を含む)には、1289ドル10セントから1306ドル90セントのレンジで推移している。
NY市場、2日で30ドルの急騰
金相場の上昇は、北朝鮮リスクが原因だ。北朝鮮がグアムを攻撃すると報じられたことをきっかけに、地政学リスクが急速に高まった。北朝鮮の「脅し」に、米トランプ大統領が激しく警告。同時に、フランスや日本、韓国などとも軍事行動を視野に入れながら対応策を練っていることが伝えられるなど、ヒートアップした。
米ニューヨーク商品取引所の金先物相場は、2017年8月9日が前日比16ドル60セント高の1オンス=1273ドルで取引を終了。翌10日が前日より10ドル80セント高い1290ドル10セントとなり、2日間で30ドル近くの値上がり。6月以来2か月ぶりの高値を付けた。
8日の終値が前日比1.80ドル安の1256ドル40セントと、それまで5営業日連続の下落だったことから、北朝鮮リスクの高まりを受けたことは明らかだ。
北朝鮮リスクへの懸念から、8月14日の週は株式市場で米ダウ平均株価や日経平均株価が大幅に下落。日経平均株価は週初め4日続落で、5月19日以来の1万9500円を割り込んだ。
その一方で、金価格は高値で推移。米ニューヨーク金先物相場は18日(時間外取引を含む)、1289ドル10セントから1306ドル90セントのレンジにある。東京商品取引所の金先物相場も前日から値下がりしたものの、1グラム当たり4512円を付ける高値圏にある。
金委員長の態度軟化? それとも......
金相場に影響を与える北朝鮮問題は今後、どう動くのか。これまで北朝鮮は米トランプ大統領の挑発的な言動に、ことごとく反発してきた。しかし、2017年8月14日に朝鮮人民軍戦略軍司令部の「ミサイル発射準備完了」の報告を受けた後、金正恩労働党委員長が「愚かな米国の行動をもう少し見守る」と、強硬姿勢のトーンを下げたことで、軍事衝突という「最悪の事態」は遠のいたとの見方も広がった。
また、米国ではトランプ大統領が側近で、極右思想で批判を集めていたバノン主席戦略官の更迭が19日に報じられたことで、トランプ大統領のこれまでの強硬な姿勢がやわらぐともみられている。
一方で、8月18日には韓国・国防省が、朝鮮半島有事を想定した定例の米韓合同軍事演習を、21~31日に韓国で行うと正式発表。演習に刺激された北朝鮮が弾道ミサイルの発射などに踏み切る可能性は否定できない。さらに、8月25日は先軍節(金正日総書記が先軍政治をはじめた日)や9月9日には建国記念日を控え、北朝鮮から目を離せない状況が続きそうだ。