10年前も暴走した「灰色のサイ」
「灰色のサイ」は発生する確率の高いリスクであり、社会の各分野で相次いで登場している。多くの経済事件は、「ブラックスワン」というよりも「灰色のサイ」であり、爆発前にすでに前兆が見られているが、無視されてきた。
例えば、2007年から2008年までの金融危機は、一部の人々にとっては「ブラックスワン」的な事件であるが、大多数の人々にとってこの危機は数多くの「灰色のサイ」が集まった結果である。早くから警告を示す兆候が見られていたのだ。
国際通貨基金と国際決済銀行は危機が発生する前に、継続的に警告を発していた。 2008年1月、世界経済フォーラムはリスク報告で、予想されている不動産市場の衰退、流動性資金の緊縮、そして高止まりしているガソリン価格など、どれも実際に発生して経済崩壊のリスクを押し上げていると指摘していた。
現在、不平等という問題も一種の「灰色のサイ」かもしれない。この問題も、もはや今に始まったことではないが、これまでずっと重視されてこなかった。金融危機勃発後から今日に至るまで、世界経済でも特に先進経済地域の蘇生は力のない状態のままであり、中流及び貧困層の生活は悪化の一途をたどり、貧富の差は拡大している。最終的に一連の「ブラックスワン」事件を招く要因の一つになるかもしれない。
中国人民大学・重陽金融研究院の高級研究員である何帆氏は、「未来経済学において最も重要な問題は収入の不平等であり、この問題は世界経済の頭上にある『ダモクレスの剣』である」と指摘している。