「おかしなことは書いてない」との声も
ただ、他の選考委員の批評を見ても、温氏の作品に厳しい意見はあった。例えば、次のようなものだ。
「『母国語』とアイデンティティーという切実なテーマだけが、ブルドーザーのように眼前に迫ってくる。これでは読者は怖くて飛び退くしかない」(吉田修一氏)
「既に自己の特異性を痛快にエッセイに書いた後、それをノベライズしても二番煎じを超えない」(島田雅彦氏)
こうした他の選考委員の意見を踏まえた上で、インターネット上には、
「対岸の火事だと思っている人の意識を変えることができなかった、力不足な作品だ、と言っているのであり、選評としてこれはアリ」
「宮本輝氏の選評は特におかしなことは書いてないと思う。ただ言葉足らずな印象を受ける」
と選評全体としては「問題ない」とみるユーザーも出ており、全体として賛否が分かれている印象だ。
なお、温氏は17日に更新したツイッターで改めてこの問題に言及。「作品への評価ならどんな叱咤激励にも心して耳を傾ける」とした上で、
「『怒り』を表明したのは作品以前の問題と判断したからだ。日本で最も有名だと思われる文学新人賞の場に、あの選評を許容する余地があったことがショックだった」
と振り返っていた。