「野球と勉強の両立は無理」「文武両道などあり得ない」。創部52年で初の甲子園出場を果たした下関国際高校(山口県)の坂原秀尚監督(40)のこうした持論に、アスリートでタレントの武井壮さん(44)が噛み付いた。
勉学もスポーツもできトップに立っている人もいる、とし、そうした人たちはスポーツ人生が終わっても次の活躍場所からの引く手はあまただ、とした。そして、学校のスポーツも勉強も、やればやるだけプラスになり人生の武器になる、とした。
そうしなければうちのような弱いチームは勝てない
事の発端は2017年8月14日付けの「日刊ゲンダイ」。坂原監督の見開きインタビューが掲載されていて、「文武両道という言葉が大嫌い。あり得ない」という大きな見出しが付いている。下関国際高校の偏差値が「36」(山口県下関市にある予備校)ということもあってか、進学校の野球部に対する強烈なライバル心をむき出しにしている。05年に監督に就任当時はかなり野球部が荒れていた。そのためマナーを徹底的に叩き込み半強制的に練習をさせてきた。遅い時は23時までやらせる。それは野球技術を磨くだけでなく選手間の連帯感を持たせるため。そして、
「そういうものを大切にしていかないと、うちのような弱いチームは他に勝てない。進学校さんはそういうやり方が嫌いだと思いますけど」
と語っている。自主性をうたう進学校には絶対に負けたくないし、進学校と対戦する時は普段練習していないだろうと思い、試合時間を長引かせ相手をヘトヘトに疲れさせてやる。野球と勉強の両立について聞かれると、
「無理です。『一流』というのは『一つの流れ』。例えば野球ひとつに集中してやるということ。文武両道って響きはいいですけど、絶対逃げてますからね」
とし、文武両道は「二流」だとした。そして、他校の監督は「楽しい野球」というが嘘ばっかりだ、とも。自分は現役の時に日々の練習が楽しいと思ったことはないし、「楽しく」という餌をまかなければ選手を集められない学校を否定した。
このインタビューに噛み付いたのが武井さんだ。14日放送の「バラいろダンディ」(TOKYO MX)に出演した武井さんは、甲子園初出場に導いた監督のため、このインタビューで言っていることが全てではないのは分かるが、極端すぎるとした。超一流になった人があまり勉強できなかった、というのは結果の話であり、勉強が出来てトップに立っている人もいる。そういう人たちは怪我などでスポーツ人生が絶たれても次の仕事は引く手あまただ、などと語り出した。
「文」を求めるなんて無理?
武井さんは、自分は物理学を勉強してから陸上を始めたが、それが役に立っており勉強は重要だ、とした。プロ野球選手を目指そうと練習ばかりしていても、実際になれるのは全体の一握りもいない。ではプロ野球選手になってそれが全て一流かというとそうではなくて、プロ野球選手になれなかったとしても、
「その教えを胸に、違う道(職業)でも一流の歩き方ができる、というのが一流だと思っている」
と力説した。そして「楽しい」に触れ、スポーツにおいて楽しいのは楽しく練習することではなく、正しく伸びていける練習をして実力が本当に身に付くこと。そのためには勉強をすることが必要で、こうした勉強は楽しいと力説した。武井さんはトレーナーをして経験上から教育に関する発言も多く、12日にはツイッターで、
「学校のスポーツも勉強も『しなくてもいい』もんじゃねえよ。やればやるだけ人生のプラスになる武器になんだよ」
などとつぶやいていた。
こうした両者の考え方について、ネット上ではどちらも正論だという声がある一方で、武井さんに対する反対意見の方が多い。というのも武井さんは誰もが理解できる優等生的な一般論であり、坂原監督は偏差値36の高校生を甲子園に出場させる苦労を語っている、という理解からだ。掲示板には、
「スパルタ監督を叩いている連中には社会の上澄みしか見えていない 」
「偏差値36の生徒に『文』を求めるなんて無理だから、とにかく『武』の野球一筋にやらせてるんだよ。監督も別に一般化して言ってるわけじゃあない」
「武井のはもう少しマシな学校での普通の理屈だから普遍性はあるけど、普通の方法じゃだめなレベルの環境でどうしたらいいのよ、ってことでしょ」
「これは、勉強ダメでも他のことで実績つくればいいんだよ。と言う監督の優しいアドバイスだろ。初めから出来る奴ならそんなこと言うこと無いし。 少なくとも監督は実績でそれを示した」
などといったことが書き込まれている。