「両国間での合意が、一人一人の権利を侵害することはできない」
これに対して文氏は
「両国間での合意(日韓請求権協定)が、一人一人の権利を侵害することはできない。両国間の合意があるにもかかわらず、徴用された強制徴用者個人が三菱などをはじめとする企業に対して有する民事的権利はそのまま残っている、というのが韓国の憲法裁判所や韓国大法院(最高裁)の判例(判断)だ。政府はそのような立場から、過去の歴史問題に取り組んでいる」
と述べた。
徴用工問題をめぐっては、韓国の最高裁が2012年、「個人の請求権は消滅していない」とする判断を示している。これを機に、元徴用工や元女子挺身隊が日本企業を相手取って相次いで訴訟を起こしており、続々と日本企業が敗訴している。文氏としては、過去の政府見解を覆す形で裁判所の判断を追認したことになる。仮に日本企業の敗訴判決が確定すれば、その企業が韓国で持つ財産が凍結されるおそれも指摘されている。
徴用工以外に慰安婦の問題も引き続き「火種」だ。慰安婦問題は、15年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したとされているが、文氏は
「(1965年の日韓国交正常化に向けて行われていた)日韓会談当時には知らなかった問題だった。いわば、その会談では取り上げられなかった問題だ。慰安婦問題が知られて社会問題となったのは、韓日会談から後のことだった。だから慰安婦問題が(国交正常化に向けた)日韓会談で解決されたということ正しくないと思う」
などと主張。問題は未解決だとの立場をにじませた。合意については
「今、外交部(外務省)が自主的にタスクフォース(作業部会)を設置して、その合意の経緯(に検証)や評価について作業を行っている。その作業が終わり次第、外交部が方針を決める」
と述べ、現時点では大統領選で公約にしていた「再交渉」への言及は避けた。