旧満州(中国東北部)で細菌兵器の開発を進めていたとされる旧日本軍の「731部隊」(関東軍防疫給水部)をめぐるNHKのドキュメンタリーが反響を広げている。
番組では、戦後に731部隊のメンバーを旧ソ連が裁いた軍事裁判の様子を収めたテープを発掘。中国人の囚人に細菌を感染させたり、わざと凍傷を負わせたりする人体実験の様子が語られた。中国外務省は番組について「日本の洞察力のある人々の勇気を賞賛する」と異例の論評をした。
「ハバロフスク裁判の音声記録」を公開
番組は「731部隊の真実 ~エリート医学者と人体実験~」と題して8月13日に放送され、17日未明に再放送された。番組は、ロシア国立音声記録アーカイブで発掘された1949年の軍事裁判「ハバロフスク裁判」の約22時間にわたる音声記録や、731部隊に「少年兵」として属していた人のインタビュー、京都大学などに残されていた資料などで構成。人体実験の実態や、軍からの多額の研究費の見返りに、東大や京大が多くの医師を731部隊に送り込んで人体実験を進めていたことを指摘した。
番組では、ハバロフスク裁判の録音資料の意義を
「この裁判は、これまでソ連が公表した文書の記録しかなく、ねつ造だと批判する声もありました。今回見つかった音声記録では、部隊の中枢メンバーが人体実験の詳細を証言していました」
と説明した。
当時の憲兵や衛生兵が、人体実験の様子を次のように証言する音声が流された。
「中国人、それから満人(満州人)を約50名あまり人体実験に使用しました。砂糖水を作って、砂糖水の中にチフス菌を入れて、そしてそれを強制的に飲ませて細菌に感染をさせて、そしてその人体実験によって亡くなった人は12~13名だと記憶しています」
「人体実験を自分で見たのは1940年の、確か12月ごろだったと思います。まず、その研究室に入りますと、長い椅子に5名の中国人の囚人が腰をかけております。それで、その中国人の手を見ますと、3人は手の指が全部黒くなって落ちておりました。残りの2人は指がやはり黒くなって、ただ骨だけが残っておりました(中略)凍傷実験の結果、こういうことになったということを聞きました」