2017年8月16日の試合で約2か月半ぶりの1軍登板を果たした阪神・藤浪晋太郎投手(23)に、「イップス疑惑」が再燃している。この日の投球が、5回途中まで投げて7四死球とまたもや「大荒れ」の内容だったためだ。
J-CASTニュースは8月17日、多数のプロ野球選手のイップス治療経験がある「IMTメンタルオフィス」(東京・千代田区)の阿部久美子氏に、藤浪の「症状」について見解を聞いた。
与えた7四死球はすべて右打者
藤浪は8月16日、京セラドームで行われた広島戦に先発登板。4回と3分の2イニングで107球を投げ、7安打7四死球3失点でKO負けを喫した。
2回には、投手・大瀬良大地に死球。すっぽ抜けた直球が左肩を直撃し、大瀬良はグラウンドにうずくまった。さらに4回にも、すっぽ抜けた変化球が二番・菊池涼介の左肩付近に直撃。両チームが本塁付近に駆けつけ、球場は騒然としたムードに包まれた。
2つの死球に代表されるように、この日の藤浪はなかなか制球が定まらず。結果、5回ツーアウトで八番・石原慶幸に5つめの四球を与えた場面で降板。翌17日には2軍降格となった。
この試合で藤浪が与えた7四死球は、すべて右打者と対戦した際のものだ。実際、右打者への投球が「ボール」と判定された割合は52.7%(55球のうち、29球がボール<2死球含む>)。一方、左打者へのボール率は30.7%(52球のうち、16球がボール)だった。
藤浪は右打者を相手にすると急に制球を乱す――そんな傾向に気付いた野球ファンは少なくなかったようだ。この日の試合中継を見ていた視聴者からは、ツイッターやネット掲示板に、
「右打者に対してイップスになってないかこれ」
「イップスで右打者の内角投げれないのでは」
「右打者に対してだけよね。何でなんやろ?左打者に対しては普通に投げられる」
といった指摘が相次いだ。
専門家「イップスだと思われます」
藤浪の「イップス疑惑」との関連が噂されているのが、度重なる右打者への死球だ。
16年4月には、ヤクルト・谷内亮太の左手首にストレートを直撃させた。谷内は左尺骨骨折と診断され、4か月の離脱を余儀なくされた。17年4月には、同じヤクルトの畠山和洋の顔面付近に死球。両軍入り乱れての大乱闘となった。
さらに2軍降格後の7月2日のウエスタン・リーグの試合では、中日の若手内野手・石垣雅海に頭部死球を与え、プロ初の危険球退場処分を受けた。こうした死球の記憶をぬぐい切れず、心理的な影響が投球時に出ているのではないか......というのが、ネットユーザーらの推測だ。
はたして、藤浪は「イップス」なのか。J-CASTニュースの取材に応じた「IMTメンタルオフィス」の阿部氏は、
「客観的に見れば、イップスだと思われます。今回の登板で、改めてそう感じました」
と断言する。そう判断した理由については、
「藤浪君は、万全を期して今回の1軍登板に臨んだはずです。でも、この前と同じ過ちを繰り返してしまった。そうなると、やはり技術よりメンタル面の問題の方が大きいと思います」
と説明する。また、右打者への投球でボールが続いた件については、
「相手に死球を当ててはいけない、ボールが右に行ってはいけない。そうした強い思いが投球時の力みに繋がり、逆にコントロールを乱してしまう結果となったのではないでしょうか」
と分析していた。
本人は「イップス」を否定しているが...
また、今回の登板で阿部氏が注目したのは、4回に藤浪の手からボールがこぼれ落ちた場面だ。相手バッターは右打者の菊池。いつも通り投球モーションに入った藤浪の手から、途中でポロッとボールが落ちたのだ。
このシーンについて、阿部氏は「藤浪君のメンタルを表す、象徴的なシーンだと感じました」として、
「腕に力が入ることを自分で分かっていて、『力を抜こう、抜こう』と強く意識していたんだと思います。その結果、ボールがこぼれてしまったのだと思います」
と話した。
だが一方で、スポーツ紙などの報道によれば、当の藤浪は「イップス疑惑」を否定しているという。