猛毒を持つ南米原産のヒアリの日本侵入が相次いでいるが、国立環境研究所は2017年7月から国内で採取されたヒアリの遺伝子解析を進めている。
ヒアリには女王が1匹で巣を作る「単女王型」と、数匹~数十の女王が巣に共存する「多女王型」があり、タイプによって駆除方法が違ってくるからだ。
生息地が広がる「単女王型」と密集する「多女王型」
同研究所のウエブサイト「侵入生物データベース ヒアリ」などによると、両方のタイプともやっかいな性質を持っている。
単女王型は他のコロニーを嫌い、互いに離れた場所に生息する傾向がある。そのため女王は遠い距離を飛び、あちこちに分散する。つまり生息地がどんどん広がるのだ。一方の多女王型では、多くの女王が協同で卵を生む。女王は単女王型より小型で飛翔能力が低いため生息地が広がりにくい。その代わり、コロニーの中にいるアリの密集度が高くなる。
J-CASTヘルスケアの取材に応じた同研究所の担当研究員はこう語った。
「防除方法の参考にしてもらうため、侵入してきたヒアリがどちらのタイプか分析を進めています。駆除方法は基本的に変わらないと思いますが、単女王型だとモニタリング(警戒)の範囲が広がります。また、多女王型だと密集度が単女王型の2倍以上に高まるうえ、女王の中には逃げるものが出てくる心配もあります」
米国や豪州の例では、多女王型の方が駆除に手間がかかる。女王が1匹でも逃げると、すぐに復活するからだ。また、密集度が高いため、誤ってコロニーの土を工事現場や農地に運び、大繁殖を招いたケースが少なくない。