受動喫煙で大動脈破裂の死亡リスク2.35倍に 家庭より飲食店での悪影響が大きい

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   他人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙の頻度が高い人は、ほとんどない人に比べ、大動脈瘤(りゅう)など大動脈破裂の病気で死亡するリスクが2.35倍になるという研究結果を筑波大のチームがまとめ、米医学誌「Atherosclerosis」(電子版)の2017年6月20日号に発表した。

   受動喫煙が大動脈の病気の危険リスクであることを明らかにしたのは世界で初めてだという。

  • 受動喫煙対策が遅れている
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大動脈の病気は緊急手術しても死亡率30~50%

   大動脈は、心臓から腹部にいたる体の中心を走る最も太い血管。大動脈の病気には大動脈瘤(りゅう)と大動脈解離(かいり)の2つがある。大動脈瘤は血管がコブのようにふくらんだ状態になる。大動脈解離は血管の内壁がはがれ血管に亀裂が入る。どちらも放置すると、突然血管が破裂し大出血を起こす、命にかかわる重大な病気だ。たとえば大動脈瘤が破裂した場合は、緊急手術をしても死亡率は30~50%といわれる。ともに動脈硬化や高血圧が主な原因だ。

   筑波大学の発表資料によると、これまでの研究で受動喫煙は肺がん、心筋梗塞、脳卒中の死亡リスクを高めることが分かっている。一方、喫煙自体は大動脈の病気を引き起こす危険要因の1つであることが明らかなため、受動喫煙はどうなのか調べることにした。

   研究チームは1988~90年当時に40~79歳だった全国の4万8677人を調査対象に選んだ。対象者に喫煙習慣の有無や受動喫煙の状態についてアンケート調査を行ない、その後平均16年にわたり追跡調査した。対象者のうち大動脈瘤と大動脈解離で計141人が死亡した。

   タバコを吸わない人を受動喫煙の頻度に応じて3つのグループに分けて比べると、死亡リスクは頻度が高い人(家庭で毎日2時間以上か、職場や飲食店などでほぼ毎日)が、受動喫煙のほとんどない人の2.35倍だった。また、受動喫煙の場所についても「家庭内」と「家庭外」に分けて調べると、家庭より飲食店など家庭外での影響の方が大きかった。ちなみに、喫煙者の死亡リスクも同時に調べたが、タバコを吸わない人の4.09倍だった。

   先の通常国会では、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の提出が見送られている。研究チームの山岸良匡(かずまさ)筑波大准教授は、発表資料の中でこうコメントしている。

「この研究で受動喫煙が人体に与える悪影響がまた1つ明らかになりました。現在日本では受動喫煙対策は十分になされていません。諸外国に比べ明らかに遅れています。この研究を機に受動喫煙の有害性の認識が国民の間に広まることが期待されます」
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