自分の好みや使い方に合わせて商品を自由に作り替える「カスタマイズ」がちょっとしたブームだ。店頭でバッグの色や形を好きなように選んで組み立て、その場で持ち帰れるといった商品も増えている。「消費者が『自分らしさ』を重視する傾向を強め、企業側がそうしたニーズを敏感に感じて商品開発を急いでいるのではないか」とエコノミストらは見ている。
「ここ数年の間に、なんでもカスタマイズするようになっている気がする」と話すのは、東京都内の大手百貨店の社員だ。2017年夏現在、東京都心部で目立っているのはバッグだという。
バッグやパンプスをカスタマイズ
カスタマイズ・バッグは、持ち手(ハンドル)や側面などパーツごとに、さまざまな色や模様が準備されており、買い物客は店頭でそれらを自由に選んで好みにあったバッグにすることができる。それぞれのパーツはチャックで簡単につなげられる。通常のバッグなら、持ち手も側面も同じ色であることが多いが、持ち手だけをレモン色にしたり、側面だけ明るい水色にしたりするなど自由自在。持ち手や側面を複数購入しておけば、日々、いろいろなバリエーションを楽しむこともできる。
一方、かかとを取り替えられるパンプスも話題となっている。靴の本体を一つ購入しておき、高さや色が異なるかかとを複数持っていれば、さまざまな場面に対応できる。例えば、黒い本体と黒いローヒールの組み合わせなら仕事や会議用に使えるし、同じ黒い本体につやつやした細く赤いハイヒールを組み合わせれば、ちょっとしたパーティーなんかにも使える。旅行に複数の靴を持たなくても、いくつかのかかとだけ持っていけば十分だ。
そんなカスタマイズの動きが加速していることについて、ある小売り関係者は「節約志向とは明らかに違う現象だと思う」と話す。単なる節約志向なら、「ユニクロ」に代表されるような、安価でできるだけ高い品質の商品を選べばいい。
「しばらくブームが続くのではないか」
しかし、それでは個性を表すことはできない。一方、オーダーメードするほど経済的な余裕もない。他人と同じものを身につけることに抵抗を感じ、可能な範囲内で「オンリーワン」を目指したいという人たちが、「カスタマイズ商品」に引きつけられていると言えそうだ。
「ある意味、節約志向に飽きてきた消費行動の一つの現れかもしれない」(アナリスト)との見方も出ている。比較的安価な服やサンダルに高価なビーズで装飾するなど、自分自身でお金をかけて商品を作り直してしまう動きも広がってきている。「カスタマイズは今後、しばらくブームが続くのではないか」と、小売り関係者はみている。