「蜂に刺されたらオシッコをかけろ」 昔からの言い伝えは効果あるの?

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   全国各地でヒアリの目撃情報が相次いでいる。強烈な毒を持ち、刺されると激しい痛みを感じるというから恐ろしい。ヒアリに限らず、夏から秋にかけてはスズメバチに刺されて病院に搬送されるというニュースをしばしば耳にする。

   虫刺されの対処法として、こんな「治療法」を聞いたことはないだろうか。「刺されたところに、すぐにオシッコをかけなさい」。

  • 子どもの頃、こんなことありませんでした?(イラスト・サカタルージ)
    子どもの頃、こんなことありませんでした?(イラスト・サカタルージ)
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「アンモニアが効く」という言い伝え

   アラフィフ記者には、こんな記憶がある。小学生の頃、同級生男子たちと草原で遊んでいたら、ひとりが虫に刺された。ハチだったかは定かでないが、遊びは中断。患部は少し赤く腫れていて、本人も痛そうだった。

   仲間のひとりがおもむろに、こんなことを言い出した。

「よし、みんなで一斉にオシッコをかけてやろう」

   「虫刺されにはアンモニアが効く。そこで『最も身近なアンモニア』であるオシッコを活用しよう」という説明だ。なるほど、もっともらしいし何より早く友人を助けたい。みんなで「よしっ」と思った瞬間、刺された本人が「やめてくれ~」と逃げ出した。集団でオシッコをかけられる自分を想像したら、さすがに嫌になったのだろう。

   虫刺され、中でもハチに刺されたらオシッコをかけるという「言い伝え」を知る人は、意外といるようだ。インターネットの質問投稿サイトでは「本当に効果があるのですか」と信ぴょう性を問う質問が複数見つかる。J-CASTヘルスケア編集部内でも、30代の記者から「子どものころに聞いたことがある」との声があった。逆に年長者でも知らないという意見が出た。

   農林水産・食品産業技術振興協会のウェブサイトに「虫の雑学」というコーナーがある。少し前だが1999年の記事で、筆者が子どもの頃アシナガバチに刺された友人に「早くオシッコかけてくれ」と懇願された思い出を振り返っていた。その後「あれから60年」と書かれているから、戦前の記憶だったのだろうか。さらに記事には、こんな興味深い記述があった。

「昔はたいていの家庭にアンモニア水が常備されていた。酸の中和力を利用した虫刺されの唯一の家庭薬で、ハチに刺された痛さとともに、鼻を刺す特有の臭いを記録(原文ママ)されている方も多いであろう。 一方、アンモニアの登場以前から虫刺されに小便を塗る民間療法も各地にあった。伝承的に小便のアンモニアが利用されていたのである」

「医学的な根拠はありません」

   さて、肝心の効果はどうなのか。結論から言えば、オシッコをかけても全く意味はない。武田薬品工業の100%子会社、タケダコンシューマーヘルスケアのサイトに、こんな説明がある。

「『ハチに刺されたらオシッコをかけるといい』とよくいわれますが、医学的な根拠はありません」

   アンモニアが効果を発揮するのはアリの毒素「蟻酸」だけで、むやみに肌にかけると接触性皮膚炎の原因となる可能性もあるという。逆効果になる恐れがあるので、やめたほうがよい。なお蟻酸は、どのアリも持っているわけではない。最近問題となっているヒアリの毒は蟻酸とは別のようなので、やはりオシッコは役に立たない。

   ハチに刺されたら、患部は流水でよく洗う。針が皮膚に残っていたらピンセットなどで取り除き、患部を冷やして病院に直行しよう。呼吸困難や意識障害といったアナフィラキシーショックと思われる症状が出たら、救急車を呼ぶことだ。

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