アメリカの逆鱗に触れた? 牛肉めぐる「14年ぶり」セーフガード

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日米の摩擦が強まるおそれ

   そうなると、やはり、心配は米国との関係だ。パーデュー米農務長官が発動を受け直ちに声明を発表し、「日本が冷凍牛肉の関税を引き上げれば、米国の対日貿易赤字は拡大するだろう。農畜産分野における重要な対日貿易関係を害するものだ」と日本を非難。その前日には米国食肉輸出連合会が「米国の牛肉生産者だけでなく、日本の外食産業にも重大な影響を及ぼす」と、発動を牽制するコメントを出している。米トランプ政権は対日貿易赤字の拡大を問題視しており、中でも農業分野の日本の市場開放を重視していることから、日米の摩擦が強まるおそれがある。

   日本政府は当初、やや高をくくっていた節がある。発動を発表した際、麻生太郎財務相は「粛々と執行していく」と述べた。環太平洋経済連携協定(TPP)が今回の措置の廃止を決めていたことから、麻生氏は8月1日には、「TPPが発効していたら、(セーフガードは)なくなっていたはずだ」と述べて、米国側を牽制した。

   とはいえ、これが時代遅れの遺物という側面も否定しきれない。そもそも、1995年発効したウルグアイラウンドで、今回のようなセーフガードを簡単に発動できる仕組みを作った。その後のWTO交渉が進まず、20年以上前のルールがそのまま残っていた形。この間、日本でも肉用牛飼育農家の生産性はアップしているし、「そもそも価格帯の高い国産牛肉と外食用などの米国産冷凍肉とは競合しない」(全国紙経済部デスク)とも指摘される。

   麻生財務相は今回、8月1日の記者会見で「(発動基準となる)期間をもう少し長くした方がいいという議論はあり、3か月を6か月にするとか、いろんな話がある」とも述べている。3か月では一時的な要因の影響が受けやすいということだ。

   これに対して斎藤健農相は就任後のマスコミのインタビューで、セーフガードが関税引き下げの代償措置として導入されたことを指摘し、「今、見直しは考えておらず、米国側とよく話し合って理解を求めることをギリギリまでやるべきだ」と、見直し論を否定している。

   今秋には日米経済対話が本格的に動き出す予定で、日本としては、こうした場を活用して議論し、理解を求めていくことになる。そこで、財務省が描く見直し案を示せるか、農水省との調整は難航しそうだ。

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