米国のトランプ大統領が北朝鮮に対して「世界がこれまで見たことがない炎と猛威に見舞われる」と警告したことで、グアム周辺への攻撃を予告した北朝鮮がさらにヒートアップしている。北朝鮮側は、トランプ氏の発言が「妄言」で、北朝鮮兵士の「興奮した神経をいっそう鋭く刺激している」と主張。島根県をはじめとする日本上空を弾道ミサイルが通過するとする、さらに具体的な「計画」も明らかにした。
日本でも野党議員からは防衛体制を懸念する声も出ている。
「グアム周辺30~40キロ海上の水域に落ちる」
朝鮮人民軍でミサイル運用を担当している「戦略軍」は2017年8月9日、朝鮮中央通信を通じて
「グアム周辺に対する包囲射撃を断行するための作戦方案を慎重に検討している」
とする声明を発表。翌10日、司令官の金絡謙(キム・ラクギョム)大将が、トランプ氏を「ゴルフ場にいた米軍統帥権者」と表現し、
「『火炎と憤怒』だの、何のという妄言をまたもや並べ立てて、わが(ミサイル発射を担当する部隊の)火星砲兵たちの興奮した神経を一層、鋭く刺激している。いまだに、我々の声明を正しく理解できていないようだ」
などと発言を批判。すでに中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」でグアム周辺を攻撃する方針を明らかにしていたが、今回の声明では「4発同時発射」で攻撃し、
「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過し、射程3356.7キロを1065秒間(編注:18分弱)飛行した後、グアム周辺30~40キロ海上の水域に落ちるようになるであろう」
と具体的なルートまで予告。攻撃の計画を8月中旬までに完成させて金正恩委員長に報告して命令を待つ、とした。
PAC3の「空白地域の上空通過を明示」
北朝鮮が日本国内の具体的な地名を挙げながらミサイル発射に言及するのは珍しく、8月10日の衆院安全保障委員会の閉会中審査でも問題視された。日本のミサイル防衛は、大きく(1)イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM3」、(2)地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の2段構えだ。民進党の玉木雄一郎幹事長代理(香川2区)は、SM3で迎撃できなかった場合を念頭に、
「私も住んでいる四国にはPAC3が配備されていない。呉を含めた中国地方も、PAC3は空白地帯になっている」
「今回のように明確に空白地域の上空を通過するということを明示している場合、今のようにPAC3の空白地域があるのは問題ではないか」
などとPAC3の配備状況について対策を求めたが、小野寺五典防衛相は
「様々な情報収集をする中で総合的に、どこに重層的に対応すべきかということについては不断の努力で対応していきたい」
と述べるにとどめた。