JR九州社長「郷愁ばかりで鉄道残すのは...」 ローカル線の未来と「輸送密度」の現実

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   JR九州の青柳俊彦社長が2017年8月8日に都内で開いた記者会見で、利用が少ないローカル線について「これから先は、すべてJRが面倒をみるということでは済まない」と述べた。JR九州は当面は現時点での路線網を維持する考えだが、7月末には路線別の利用状況を初めて公開し、都市部以外の路線の乗客が減少している実態を明らかにしたばかり。

   青柳社長は交通インフラの整備のあり方について、「地元の人と一緒に考えないといけない」「郷愁ばかりで鉄道を残すのは...」とも述べた。不採算路線を多く抱えるJR北海道は「当社単独では維持することが困難な線区」をリストアップし、バスへの転換や運賃値上げに向けて沿線自治体と話し合いを始める考えを表明している。JR九州は16年10月に株式を上場したばかりで、収益性について株主から厳しい目が向けられる。九州でも、そう遠くない時期に北海道と同様の動きが起こる可能性がありそうだ。

  • 輸送密度「ワースト」区間にある肥薩線の真幸(まさき)駅(宮崎県えびの市)。観光列車「いさぶろう・しんぺい」も停車する
    輸送密度「ワースト」区間にある肥薩線の真幸(まさき)駅(宮崎県えびの市)。観光列車「いさぶろう・しんぺい」も停車する
  • JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(新幹線と在来線の幹線)
    JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(新幹線と在来線の幹線)
  • JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(在来線の地方交通線)
    JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(在来線の地方交通線)
  • 輸送密度「ワースト」区間にある肥薩線の真幸(まさき)駅(宮崎県えびの市)。観光列車「いさぶろう・しんぺい」も停車する
  • JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(新幹線と在来線の幹線)
  • JR九州が公表した路線別の「輸送密度」(在来線の地方交通線)

最も輸送密度が高いのは博多~小倉間

   JR九州は2017年7月31日、1キロメートルあたりの1日の利用人数を示す16年度の「輸送密度」(平均通過人員)を路線ごとに初めて公表した。路線ごとの収支は公表していないが、JRが民営化された1987年と比べると、比較可能な20路線のうち12路線で利用者が減少していることが明らかになった。JRの路線は「幹線」と、それ以外の「地方交通線」に大別されるが、いずれも都市部の伸びとそれ以外の減少が目立つ。幹線7路線のうち、山陽本線(下関~門司、6.3キロ)と日豊本線(小倉~鹿児島、462.6キロ)以外の5路線で利用者が増えた。幹線で最も輸送密度が高かったのが鹿児島本線(門司港~鹿児島、281.6キロ)で3万4432人。その中でも小倉~博多間(67.2キロ)が最も高く8万2866人だった。

   一方の地方交通線では、13路線中10路線で減少。増えたのは香椎線(西戸崎~宇美、25.4キロ)、大村線(早岐~諫早、47.6キロ)、豊肥本線(熊本~大分、148.0キロ)の3路線だった。それぞれ福岡都市圏、ハウステンボス(佐世保市)、熊本都市圏に通う人が利用者数をけん引していとみられる。最も輸送密度が低かったのが肥薩線(八代~隼人、124.2キロ)の458人で、その中でも人吉~吉松間(35.0キロ)が108人で最も低かった。

インフラ維持のあり方について「地元の人と一緒に考えないといけない」

   青柳社長は記者会見で、利用が少ないローカル線について

「これから先は、すべてJRが面倒を見るということでは済まない」

と発言。路線網を維持することの重要性は強調しつつ、交通手段としては鉄道よりも自動車が主流になっているとして、社会資本として鉄道か自動車のどちらかを維持していくのが適切かについて

「地元の人と一緒に考えないといけない」

とした。交通ネットワークは使い方や「身の丈」に合ったものを確保することが重要だとして、

「郷愁ばかりで鉄道を残すのは、社会にとって本当にプラスなのか」

とも述べた。

   どの路線について議論を進めるか、議論を始める時期については言及しなかった。

   経営難のJR北海道は16年11月、輸送密度が200人未満の区間については「鉄道より他の交通手段が適している」として、バスなどへの転換を図る方向で地元と相談を始める方針を表明。輸送密度200人以上2000人未満の区間については(1)利用者の少ない駅を廃止するなどしてコスト削減(2)運賃値上げで利用者が負担する(3)沿線に利用促進策を行ってもらう(4)運行会社と鉄道施設の保有会社を分ける「上下分離方式」を導入する、という4つの方向性を示している。

   JR九州では、日田彦山線(城野~夜明、68.7キロ)や後藤寺線(新飯塚~田川後藤寺、30.0キロ)など7路線が「輸送密度2000人未満」だ。

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