メディアのイメージで行くと拍子抜けする
エッセイストとして『ソウルの達人 最新版』(講談社)など著作も多数。最近、『夢のあとさきー帰郷祈願碑とわたし』(三五館)を上梓した。
――地方の魅力に目覚めたのは、何がきっかけだったのですか?
黒田 慶尚南道の咸陽(ハミャン)にある棚田です。バスで移動しているとき、夕方、その棚田が目に飛び込んできたのです。ちょうど収穫の時期で、稲穂が夕陽に照らされて黄金色に輝いていた。それが何とも美しくて。
――地方でお気に入りの場所はありますか?
黒田 全羅南道の邊山(ビョンサン)、咸平(ハムピョン)にある海水蒸し風呂(ヘスチム)ですね。火でカリカリに焼いた硫黄を含んだ鉱石と、中国漢方の流れをくむ「韓方」の薬剤とをくみ上げた海水に入れる。海水は熱いぐらいに温められて、入ると温熱効果があります。目の前には海が広がって眺めもよくて、お勧めですよ。
――韓国に行くと、必ず食べるものは?
黒田 いろんな葉っぱに包んで食べるのが好きですね。豚肉を唐辛子味噌で炒めたものとか、いろいろな種類の塩辛、味噌、キムチなどを、種類の違う葉っぱで包んで食べると、葉っぱの風味によって違う味が楽しめます。
そういえば韓国の人は食べ方も豪快ですね。日本人は、大きな口を開けて食べるのはお行儀が悪いと思うけれど、韓国の人は目をむくほどに大きな口をあけて一度に口の中に詰め込むのが流儀。今の中高年以上は飢えを経験しているので、頬張ることの幸せを噛みしめているような気がします。
――最近は、日韓関係の悪化の影響もあり、日本からの観光客が減っているようなのですが、黒田さんはどうお感じになりますか?
黒田 現在の韓国と日本の関係は、私が30数年前に韓国と関わり始めて以来、最大の嵐がきていると思います。でも私たちは本当に仲が悪いのかというと、そうじゃない。たとえば慰安婦問題で、日の丸を踏んづけたり燃やしたりしている人が韓国のすべてではない。日本だってそうでしょ。ヘイトスピーチをしている人が全部かというとそうではない。
だから「韓国は怖いかも」いうイメージで構えて行くと、拍子抜けするかもしれません。日本人に対する感情がいいので。私たちも韓国人が日本に来たからといって、怒ったりしないでしょ? それと同じですよ。メディアが刺激的なシーンを切り取って報道するから、偏ったイメージになるのだと思います。