「キスご法度社会」と「キスオープン社会」の差は
ところで、今回の研究ではバングラデシュの夫婦を対象にしたことが重要なポイントだ。実は、キスの仕方の右利き・左利きの調査は欧米で何度か行なわれており、今回と同じ結果が出ている。たとえば、ドイツの空港や駅、公園で観察した研究では、キスをしたカップルの80%が頭を右に傾け、ドイツ国民の右利き率と一致している。しかし、欧米の人々は公共の場でも平気でキスをする「キス社会」なので、他人のキスを見て右に傾けるようになったという指摘を否定できないでいた。
バングラデシュではテレビや映画のキスシーンが検閲され、カットされている。キスがご法度の文化の中で、48組の夫婦は他人のキスを見ないで育った。だから48組のキスは、社会的・文化的な影響を受けない「人間の生まれつきの自然な行動」というわけだ。今回の結果について、バース大学のマイケル・プロルクス博士は論文の中でこうコメントしている。
「バングラデシュの結果は、これまでの欧米の研究結果とまったく一致しています。欧米の人もバングラデシュの人も、キスをする時、頭を傾ける方向が利き腕の方向と同じでした。このことは、胎児の非常に早い段階で『非対称』が決まってしまい、生まれついての行動が成人になっても影響するということです」