NTTドコモの株価が冴えない。2017年4~6月期連結決算(米国会計基準)を発表した7月27日の翌日28日、その内容への失望売りが膨らみ、前日より1%安の2560円50銭まで下げた。4月につけた年初来安値2559円にあと1円50銭というところまで落ち込んだもので、その後も本格的な浮上のきっかけをつかめずにいる。存在感を高める格安スマートフォンへの対応がじわじわと業績を悪化させていることに市場が注意深く反応している。
その決算内容を見ると、本業の儲けを示す営業利益は前年同期比7.0%減の2782億円、純利益は8.2%減の1899億円と振るわなかった。売上高は固定光回線「ドコモ光」とのセット販売が押し上げる形で2.5%増の1兆1366億円だった。一方、営業利益が前期比1.6%増の9600億円などとする2018年3月期通期の業績予想は据え置いた。
格安スマホブランドの有無
営業利益が前年同期より減った背景には、格安スマホに顧客が流れるのを防ごうと「格安っぽい」料金プランを導入したことがある。月980円で家族間通話が無料となる「シンプルプラン」、月30ギガバイトまでのデータ通信を家族で分け合える「ウルトラシェアパック30」を5月に導入。6月には長期契約者の料金を月1500円割り引く「ドコモウィズ」も追加した。これらの施策が4~6月期に100億円程度の減益要因となった。
ドコモ以外の携帯通信会社大手、KDDIとソフトバンクにはそれぞれ、「UQモバイル」「ワイモバイル」という格安スマホブランドがある。両ブランドはともに月1980円の料金で一定時間内の国内通話がかけ放題、データ通信は月2ギガバイト以下とやや抑制気味に設定する。それはそれで「本体」と客を奪い合う格好にはなっているのだが、格安ブランドへの流出を自社グループ内に一定程度とどめることで全体としての集客力を維持しているのも事実だ。これに対し、ドコモはグループ内に格安スマホブランドを持たないだけに、本体で割引プラン導入などの対抗策を取っていかざるを得ない状況に置かれている。
「ゼロ円スマホ」追放運動の好影響
「スマホ代が高過ぎて他の消費に十分回っていない」との安倍政権の考えのもと、監督官庁の総務省が後押ししていることもあって格安スマホは伸びている。同省によると、3月末時点で1586万件となり、前年同期比で25%増えた。特に、「通信会社にとって長いおつきあいをお願いしたい若い世代が格安スマホに流れている」(大手の代理店)とされる。その傾向がにわかに変わるとは考えにくく、しばらくはドコモをはじめとする携帯通信大手の業績に逆風を浴びせそうだ。
ただ、ドコモの業績と株価が一本調子に落ちていくと見る人が多数派というわけでもない。2016年度の格安スマホが25%伸びたのは確かだが、伸び率は前年度の33%よりは鈍化しており、圧倒的な勢いを持っているわけではない。また、総務省が「コロコロ契約先を替える人が得をし、その分長期契約者が負担させられている」などとして、この間取り組んできた「ゼロ円スマホ」追放運動は、結果的に携帯通信大手が新規顧客獲得のために多大な販売促進費をかけなくて済むことになり、ドコモなどには朗報だ。
格安スマホが携帯通信大手の業績に影響するのは確かだが、それがどの程度なのかは見方が分かれている。