韓国国内で続々と慰安婦像が設置される中、ソウル近郊の仁川(インチョン)市内にある公園に、「強制徴用労働者像」が設置されることになった。
仁川地域の労働組合や市民団体でつくる「日本植民地時代徴用労働者像仁川建設推進委員会」が市民から資金を募って像を製作。2017年8月12日に除幕式が行われる。韓国では、元徴用工が損害賠償を求めて相次いで訴訟を起こしており、今回の像設置が、さらに韓国世論に火をつける可能性もありそうだ。
半年で目標額を上回る1億1000万ウォン(約1080万円)が集まる
韓国メディアによると、「推進委員会」は17年2月に結成され、約半年で目標額の1億ウォン(約980万円)を上回る1億1000万ウォン(約1080万円)を集めた。設置される像は横4メートル、縦3メートルでブロンズ製。「解放の予感」と名付けられ、工場で働いていた労働者親子をモチーフにしている。
像は日本統治下の軍需工場の跡地の向かいにある富平(プピョン)公園に設置される。この公園には16年10月には慰安婦像が設置されたばかりで、徴用工像は慰安婦像の隣に設置されるという。韓国日報によると、「推進委員会」のギム・チャンゴン代表は
「日本植民地時代の強制徴用は忘れられていく歴史だった。労働を収奪されて人権が蹂躙された歴史を記憶するためには、若い世代のために徴用労働者像の建設が必要だった」
と狙いを話した。
元徴用工らが起こした訴訟14件が進行中
労働者像は16年8月、朝鮮人の強制連行などについての歴史を展示している「丹波マンガン記念館」(京都市左京区)に韓国の労働組合が設置した例があるが、韓国国内では初めてだという。ソウル、済州、釜山でも設置の計画が進んでいる。
徴用工の個人請求権の問題は、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との立場だが、韓国の最高裁は2012年「個人の請求権は消滅していない」とする判断を示した。
これを機に、元徴用工や元女子挺身隊が日本企業を相手取って相次いで訴訟を起こしている。17年8月8日には、三菱重工業の名古屋市内の軍需工場などに動員された元挺身隊員の女性と遺族が損害賠償を求めて起こした訴訟の判決が韓国南西部の光州地裁であった。判決では原告側の訴えを認め、同社に約1億2300万ウォン(約1200万円)の支払いを命じている。聯合ニュースのまとめによると、元徴用工と遺族が日本企業を相手取って起こした訴訟は、計14件が進行中だ。