働くママの大心配は保育園に預けたわが子が急に熱を出したり、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返したりすること。何度治してもまたかかるため、疲れ果てるママも少なくない。
しかし、お母さん、頑張って! それは「保育園症候群」と言って、2歳を過ぎればウソのように楽になる症状かもしれないから。
「ナメクジが鼻から!」みたいなドロドロの鼻水
ママの間では「保育園症候群」は、意外に知らない人が多いようだ。同じ幼児でも幼稚園児はかからない。免疫力が弱いゼロ歳児から預かり、密集して保育する保育園独特の環境が影響するからだ。沖縄県医師会のホームページで、「ファミリークリニック小禄」の国吉賢医師がこう説明している(要約抜粋)。
「2歳未満の乳幼児が初めての集団生活である保育園に入ると、季節に関係なく感染症を繰り返し、鼻汁・咳(せき)が長引きやすくなります。休園も多くなり、どうして?と悩む事が多くなります。しかし、不思議なことに2歳を過ぎる頃から頻度が減り、休園するのはインフルエンザなどの流行時期に限られるようになります。これを保育園症候群と呼びます」
「なぜ、このような経過をたどるのか。まず『免疫の問題』。ウイルス感染の症状は初めてかかる時が一番キツイ。何度もかかるうちに軽症ですむようになります。赤ちゃんも慣れない環境にストレスで免疫力が低下しています。次に『ピンポン感染』。集団保育の場では一度治っても他の園児から別の細菌やウイルス感染をもらいやすい。また、『抗生剤への耐性菌の増加』の問題もあります。医師が『念のために抗生剤を』と(安易に)処方するため、いざという時に用いる薬剤がなくなるという悪循環が起こっています」
J-CASTヘルスケアの取材に応じた都内に住む2児のママAさん(40歳)も、長女(4歳)の保育園症候群に苦労した1人だ。その「病名」はこの取材で初めて知ったというが、今思うと、当時の長女がまさに典型的な症状だった。
「娘は1歳から保育園に行きましたが、最初は1週間に1度のペースで熱を出し、小児科や耳鼻科に通いました。『ナメクジが鼻から出ている!』みたいなドロドロの鼻水でした。見かねて口で吸ってあげたこともありましたが、気持ちが悪くて吐きそうになるので、電動の鼻水吸引器を買いました」
「よく中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎を繰り返しました。他の園児も副鼻腔炎と中耳炎はみんな繰り返すから、ママ同士で『あそこの耳鼻科は並ぶけど、一発で治る』とか『あそこは空いているから、急いでいる時はいい』とか情報交換をしていました」
保育園では特に保育園症候群に対する注意喚起はなかったが、園で「鼻かみ」の練習をよくしたせいか、長女は上手に鼻をかめるようになった。2歳になり、すぐに耳鼻科で扁桃腺とアデノイド(咽頭扁桃)をとる手術をすると、何とそれから4歳になるまで一度も熱を出さなかったという。A子さんはこう振り返る。
「今ではわが家で一番元気です。当時は週に1度熱を出すので本当に大変でした。もう仕事は休めない!と実家の母に来てもらいました。母も疲れ果てていましたね、あの時は...」
鼻水の吸引と鼻かみの練習を小まめに続けよう
さて、この保育園症候群に対し、働く親はどうしたらよいのだろうか。富山県小児科医会では「『たかが鼻水されど鼻水』と『保育園症候群』」というパンフレットを作り、ホームページに掲載している。それによると、(1)両親のガンバリ時!(2)病児保育、子育てサポート等利用できるサービスは何でも使う!(3)抱え込まない!と、ママパパを励ましながら、「家庭で出来ること」として次の項目を紹介している(要約抜粋)。
(1)鼻水の吸引と鼻かみの練習を小まめに続ける。鼻水の吸引は、薄めの食塩水で鼻洗浄水を作り、ペットボトルで冷蔵庫に保存しておく。それをスポイト等で数滴、鼻内に垂らす。その後、市販の鼻吸い器(シンプルな口で吸うタイプでOK)で吸引する。
(2)親は禁煙する! 外で吸っても呼気や衣服にニコチンが残り、乳幼児への影響は30%も増加する。早く治したければ子どものために禁煙を。
(3)入園前に肺炎球菌ワクチンを接種する。肺炎、中耳炎、細菌性髄膜炎等の予防にもなり、病院通いの回数が減る。「生後2か月のワクチンデビュー」がお勧め。
(4)ドロドロ鼻汁が7~10日以上の場合は:「発熱あり+喘鳴(ぜいめい)」ならまず小児科へ。「発熱なし+鼻水のみ」なら耳鼻科へ。
そして最後はこう応援エールを送っている。
「2歳すぎから、同じ病気でも軽く済むようになる。3歳からはあんなに『び~ら~』(鼻垂らしの子)だった長男も『う~まく~』(うまくかめる子)に大変身する。小児科でも『お兄ちゃんになったね~』と言われ、本人は鼻高々である」