ドーピングで出場停止処分を受けた経験のあるアテネ五輪金メダリスト、ジャスティン・ガトリン(35=米国)が、世界陸上ロンドン大会の男子100メートル決勝で「人類最速の男」ウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)を破った。
競技場の観客はガトリンに大ブーイングを浴びせ、日本のネット上では「ドーピングで出場停止から這い上がって35才で金とる方が凄いだろ」「ブーイングは必至でしょう」と議論が勃発した。中には「(ドーピングは)ミスやズルのレベルじゃないんです」と問題提起する元陸上選手も。
朝原氏「本意は絶対にドーピングをしてはいけないということ」
競技場の観客たちはレース後、今大会限りでの現役引退を表明していたボルトの健闘をたたえる一方、金メダル獲得のガトリンに大ブーイングを浴びせた。北京五輪・男子400メートルリレーで銅メダルを獲得した朝原宣治氏はツイッターで、
「100m優勝したガトリン選手に大ブーイング。1度でもドーピングに手を出した選手は世界一になっても英雄になれない」
と投稿。「これこそ正論」「ちょっと悲しい...コメント...」と、さまざまな意見がリプライで寄せられると、朝原氏はその後、
「様々な意見をいただいておりますが、私の本意は絶対にドーピングをしてはいけないということです」
と投稿し、ドーピング問題の重大さを強調した。
一方、朝原氏と同じ北京五輪の男子400メートルリレーを走った塚原直貴氏はツイッターで、過熱しつつあるバッシングの沈静化を求めた。
「ガトリンの涙にはいろんな感情がこみ上げてきたんだと思う。過去には決して許されない行為もあったけど、そのバッシングやそこから真摯に陸上に向き合ってこの年齢まで世界のトップであり続けた姿には、共に戦った陸上人として敬意を送りたい。素直に喜べよ、周りはいろいろ言い過ぎる」
また、陸上十種競技の元日本チャンピオンのタレント・武井壮さんは
「ドーピングは、国際的な犯罪だと思う。吉田沙保里や伊調馨、高橋尚子さん、内村航平や北島康介がもし全員負けてたら日本でこれだけそのスポーツが発展しましたか?で、もしその優勝者が薬物使用者なら。。」
とツイート。
「ドーピングはそんな国の文化、経済発展まで奪う略奪行為、ミスやズルのレベルじゃないんです。。」
とも主張した。
為末氏「パフォーマンスは変わらないのか検討するべき」
「本人は否定しているが、ガトリンはドーピングで一度アウトになってる。人生で一度もドーピングをしなかった場合と、使用したことがある場合では、本当にパフォーマンスは変わらないのか検討するべき」
ニュース共有サービス「NewsPicks」上で、ガトリンの優勝を伝えるニュース記事のコメント欄にこう投稿したのは、400mハードル日本記録保持者の為末大氏だ。
「ラットの実験では一度ドーピングでパフォーマンスを引き上げた場合、ドーピングをやめても数か月パフォーマンスが高止まりした。人間の寿命に当てはめると7、8年影響が残ったことになる」
と説明している。