中学校給食は「食べる力」低下招く 前・川崎市長が反対論唱える理由

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一律の給食で「食育」になるのか

   現代はスーパーもコンビニも増え、ある程度下ごしらえがされた食材や、出来合いの惣菜を買うのもそう難しくない。

「あるものから選ぶことも含め、栄養のあるものを安上がりに、おいしく取れるよう工夫する。それは勉強よりも大切な、生きる力の基本ではないでしょうか。14~15歳といえば、昔なら『元服』ですよね。そのくらいになったら、日常生活の中で自分が食べるものは自分で選択し、自分で自分を育てていく努力が必要だと考えるのです」

   どのみち、食は一生ついて回る。十分な経験を積んでいなければ、社会に出てから、かえって不健康な食習慣に陥りかねない。そう考えれば、早いうちから実践を通じ、知識や自信を得るべきだ。投書にある「食べる力」は、こうした考えによるものだという。

   また、阿部氏は、給食推進派による「食育に役立つ」という議論にも否定的だ。

「税金を使う以上、中身にしろ食器にしろ、どうしてもお金をそうかけられません。どうしても安いものを選ばざるを得なくなる。それを一律ワンパターンに押し付けることが、本当に教育になるのか。どうしても私は割り切れないのです」

   川崎市教育委員会によれば、中学校給食に伴う保護者負担は1食あたり約320円だが、それだけで給食にかかる費用を賄えるわけではなく、相当額が公費=税金で補われることとなる。川崎市が導入のため、2031年度までの18年間で費やす金額は、総計約446億円にも上る。「本当に、市民全体がそれを負担しなければいけないのか。それだけの税金を使う意味があるのか」と、かつて市政を預かった経験からも、阿部氏は重ねて疑問を呈する。

「同じお金を割くのなら、食育の専門組織を作って、中学生に料理を定期的に指導するなどして、『自分で弁当を作る』ことを運動として展開していくべきでは。もちろん今すぐ、と言われても無理で、十分な準備が欠かせません。自治体だけでなく、国も含めて仕組み作りをしていくことが必要かもしれませんね」

   7月30日投開票の横浜市長選でも、その導入の是非が争点の一つとなるなど、今なお「中学校給食」をめぐっては議論が続く。阿部氏は、「私の意見が賛否含め、いろいろと考えるきっかけになってくれればうれしいです」と取材を締めくくった。

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