耐震化を進める狙いも
関係者の間で浮上しているのは、首都高の地下化に合わせ、東京都が周辺の再開発ビルの容積率を上げ、そこで得られた収益の一部を地下化の費用に当てるスキームだ。経済同友会の小林喜光・代表幹事は、記者会見で「費用負担としてはPFI(民間資本を活用した社会資本整備)やPPP(官民連携事業)が普通の発想だ。(首都高の地下化が)都会地区における地下の利用という意味での新しいイノベーションと捉えれば、それなりに意味がある」と述べている。
前回の東京五輪に合わせて建設した首都高は50年余りが経過し、老朽化が問題となっている。事実、日本橋周辺の首都高は、2011年3月11日の東日本大震災の際は「激しく揺れ、倒壊するのではないかと皆が心配した」(周辺住民)という。今回、国交省が地下化の検討を表明したのは、景観改善で日本橋の再開発を進めるだけでなく、老朽化した首都高の耐震化を進める狙いがある。
しかし、老朽化した首都高の地下化を進められるのは、江戸時代に五街道の起点として栄え、現在も「日本の顔」として全国に知られる日本橋だから。民間の資金やノウハウを活用し、官民が連携して首都高の耐震化と再開発を両立できるのは、東京都心でも日本橋くらいに限られるだろう。周辺の首都高の地下化は2020年東京五輪・パラリンピック後の着工を目指すというが、果たして日本橋に続き、再開発・耐震化の動きが浮上するか、今後の動向に要注目だ。