内閣改造で外相就任した河野太郎氏は、歴代の外相以上に強い関心が集まることになりそうだ。河野氏は慰安婦問題で旧日本軍の関与と強制性を認めた1993年の「河野談話」を出した河野洋平元官房長官(80)の長男。政治家としてのスタイルは大きく異なるとはいえ、今でも「河野談話」への評価を問う声がつきまとう。
こういったことから周辺諸国からは「ハト派」との評価もあるが、河野氏は就任会見で2015年末の慰安婦合意の実行を求めたため、韓国メディアの中からは失望気味な声も出ている。
就任会見でも政府の立場に「付け加えることはない」
2017年8月3日夜、第3次安倍第3次改造内閣発足にともなう安倍晋三首相の記者会見で、安倍氏はわざわざ
「それと、今、質問の中にはなかったのですが...」
と断った上で、
「よく歴史認識について河野大臣のことで指摘されることがありますが、内閣の一員として、まさに70年談話において、日本のこの安倍政権、そして閣議決定をしておりますから私たちの立場は明確となっており、河野大臣も完全に一致しているところであります」
と述べた。河野氏と河野談話との関係について勘繰られることを安倍氏が警戒している可能性もある。
安倍氏が会見で発言したとおり、河野氏は外相就任会見で河野談話に対する評価を求められたが、
「我が国政府の立場は、戦後、様々な積み上げの上に出された安倍内閣での70年談話、そして、日韓合意に尽きるというのが政府の立場。これに付け加えることはない」
と政府見解を繰り返した。日韓合意については
「両国政府で確認しており、これが着実に実行されるというのが望ましいというのにはお互い分かっていること。そこはきちっと、着実に進めていただくということに尽きる」
と述べた。
「70年談話」では村山&小泉談話の「痛切な反省」「心からのお詫び」踏襲
1995年の村山談話、2005年の小泉談話では、共通して「植民地支配と侵略によって」アジア諸国に対して「多大の損害と苦痛」を与えたことに対して「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明している。戦後70年談話(2015年)では、両談話を念頭に
「こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」
とした。
河野氏としては、慰安婦について「甘言、強圧などで本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、官憲等が直接これに加担したこともあった」「朝鮮半島出身の慰安婦が多かったが、当時朝鮮半島は日本の統治下にあり、募集、移送、管理等も甘言、強圧などで本人たちの意思に反して行われた」などとした河野談話への評価を避けた形だ。
入閣前にはツイッター上の声に「俺がなにかしたか?」
河野氏は、入閣前には多少踏み込んだ発言をしていた。2013年8月には、
「あ、従軍慰安婦問題の嘘を広めた野郎だ!」
というツイッター上の発言に、
「俺がなにかしたか?」
と怒りをにじませて返信したこともある。このときは、
「官房長官談話は政府の公式見解であって、談話を発表した時の官房長官がどうこうできるものではないということすら知らずに、官房長官談話のことについて何か言ってみる輩が多い」
と、談話の内容と政治家個人が結び付けられることに違和感を示していた。
韓国メディア「タカ派とは視点が異なる」
韓国メディアは総じて河野氏に好意的な反応だ。河野氏は04年のブログで、現職首相による靖国神社の参拝について
「中国側から見れば、日中の合意に反するということになります」
と解説。これが「首相の靖国神社参拝に否定的」と受け止められ、
「歴史問題や韓中外交のような各種の懸案について、自民党タカ派とは視点が異なる」(朝鮮日報)
「自民党内ではハト派政治家として知られている」(東亜日報)
などと評価されている。両紙とも、太郎氏が洋平氏の長男である点には触れているが、太郎氏が河野談話をどう評価するかについては触れていない。
ただ、河野氏が就任会見で慰安婦合意の「着実な実行」を求める従来の日本政府の姿勢を踏襲したことで、
「韓日関係が改善されることを期待する観測に水を差した」(東亜日報)
と、失望気味な声もあがっている。