地中海沿岸諸国で食べられている伝統的な食事「地中海食」は、心血管疾患や糖尿病の発症リスク抑制、肥満抑制などさまざまな健康効果が期待できるとされている。健康的な食事として、日本でも耳にすることが多い。
しかし、実際に地中海食の健康効果が期待できるのは「高所得」で「高学歴」な人たちだけだとする研究結果が2017年2月に発表されていたことがわかり、海外のメディアが相次いで報じている。
同じ品目を食べても低所得・低学歴の人たちは...
地中海食とは野菜や果物、豆類、穀物類を豊富に用い、たんぱく源は魚介類を主体にし、適量のワインやオリーブオイルを積極的に使用した料理のことだ。イタリアやギリシャ、スペインの沿岸部の食事を指すことが多い。
昔から地中海沿岸諸国は他の欧州の国に比べて心血管疾患発症率が低く、食生活の違いに理由があるのではないかと考えられ、検証されてきた。
1950年代には「世界7か国共同研究」によって、地中海食を食べている人は食べていない人に比べコレステロール値が安定しており、心血管疾患発症リスクも抑制されていたとする結果が発表された。現在に至るまで、ほかにも地中海食の健康効果を検証した研究結果がある。
しかし本場イタリアでは、かなり厳密な地中海食を食べ続けている人たちが暮らす地域ですら、心血管疾患の発症率が大幅に低いわけではなく、「本当に地中海食に健康効果があるのか」という疑問も出ていた。
そこでイタリア保健省傘下の臨床研究機関のひとつ、「IRCCS Istituto Neurologico Mediterraneo Neuromed」が南イタリアのモリーゼ州で無作為に1万8000人の被験者を選出。2005年3月から2010年4月の間に収集した詳細な食事データと心不全や動脈硬化、脳卒中などの発症状況を分析したのだ。
その結果、地中海食が心血管疾患のリスクを効果的に低下させていることは確認されたが、その効果は高所得・高学歴な人に限定されていることもわかった。どれほど厳密に地中海食の「ルール」を順守し、同じ品目の料理を食べていたとしても低所得・低学歴の人たちではリスクはまったく低下していなかった。