発達障害と向き合うピアニスト オーケストラと共演できた感動物語

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融通が利かない、想定外のことが起こると対応できない

   野田さんには、ほかにも発達障害ゆえの苦労がある。演奏中に頭の中で別のメロディーが勝手に流れだすと、本来弾かねばならない曲に集中できなくなる。衝動的なことがあると抑えられなくなるのも、発達障害の特徴だ。一方で、好きなことなら何時間でも熱心に取り組む。実際にピアノの練習に熱中し、食事をとらないことすらある。

   番組ゲストでモデルの栗原類さん(22)は、野田さんに深く共感した。自身も発達障害であると明らかにしている栗原さんは、「融通が利かない、想定外のことが起こると対応できない」のが自分にも当てはまるという。

   野田さんの次のコンサートは、初めての弦楽隊20人との共演だ。それまでは常に独演だったので、「舞台に......楽器の人がいるところに出ていけるかも心配」と不安な様子。しかも弦楽隊全員の衣装が同じなのが怖いという。

   発達障害が原因で、高校時代は周りと同じように振る舞えずいじめられた経験がある。このため、制服のような同じ格好の集まりが怖くなった。大学に入ると新たな環境が強いストレスとなり、記憶や自分が誰かの認識が失われる解離性障害と診断された。発達障害と分かる前だ。

   弦楽隊との初対面の日。大勢に囲まれた野田さんは誰の顔も見ようとせず、やや興奮気味になった。練習でピアノに向かったが、弦楽隊が演奏を始めると小刻みに震え、耳をふさぎだした。「音が鳴って痛い、体が痛い」という。ほかの人にとってはちょうどよい音量が、耐えられないほど極端に大きく聞こえる――。これは、栗原さんも同じ体験をしていたと話した。

   だが時間の経過とともに落ち着きを取り戻した野田さんは、指揮者と言葉を交わすようになり、リラックスするとピアノを弾きだした。緊張がほぐれ、合同練習ができた。

   本番当日。野田さんがピアノ曲を弾き終えたところで弦楽隊がステージに入ってきた。野田さんが作曲したオリジナル曲を全員で見事に演奏し、コンサートは大成功だった。

   終演後、泣きじゃくる野田さん。舞台上での涙は初めてだった。曲を合わせられた時に、「オケ(オーケストラ)の人たちとおしゃべりができた気がして感動した」と話し、こう続けた。

野田さん「人がいるから怖いと思っていたけど、音楽でおしゃべりできるなら1人じゃない舞台もいい。自分の心を素直に弾いたらこんなに一気に友達ができるんだって、感動したの」
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