「格安スマホ」と称される低価格の通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業社)が存在感を増している。総務省が2017年7月4日に公表した資料の中で、2017年3月末時点のMVNOの契約数は前年同期比25.0%増の1586万件で、全体の契約数に占める割合は9.4%まで拡大してきた。
日本の携帯電話市場において、MVNOに供給するスマートフォン(スマホ)で早くから「SIMフリー」端末を手掛けてきたメーカーのひとつが、中国の華為技術(ファーウェイ)だ。ファーウェイ・ジャパンのデバイス・プレジデント、呉波氏は2017年がSIMフリースマホのマイルストーンになると予測する。
日本市場は2017年上期だけで3~4倍に成長
――J-CASTニュースで2年前にもインタビューさせていただきましたが、ちょうどSIMロック解除が義務化されたタイミングでした。当時と比べて、日本市場で「SIMフリースマホ」はどこまで定着してきたとお考えですか。
呉 およそ4年前、日本でSIMフリースマホが出始めた当時の製品は、全般的に「スーパーローエンド」と言えるものでした。価格は安いが機能性に乏しく、消費者にとって購買意欲がそそられません。しかし去年(2016年)下期あたりから、メーカー各社は旗艦モデルを投入するようになってきました。これで(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった)大手キャリアのスマホと同じスタートラインに立てたと言えます。大手とMVNOの料金プランを見比べたら、MVNOの通信費は安い。同じようなサービスを受けられるなら、SIMフリーの良さが消費者にも伝わってくるでしょう。
2016年までは、例えるなら高速道路の入り口から本線に入るまでのスロープを上っているような、緩やかな成長でした。ところが17年に入って急速に伸びており、車が本線に入って加速している段階になっています。私は17年がマイルストーンの年になると予想しています。今年1月、米ラスベガスで行われたCES(世界最大の家電見本市)で取材を受けた際、私は「日本のSIMフリー市場は2017年、3~4倍に成長するのではないか」と話しました。ところが上期だけで既に、3~4倍の成長を見せています。
――調査会社BCN調べで、ファーウェイは17年上半期、販売台数で前年同期比約300%を達成したと発表されました。実際にファーウェイの日本での成長度をどのように感じているか、教えてください。
呉 インターネット上のコメントを見ますと、高評価を頂けているようで大変ありがたいです。当社がこれまで、消費者第一を掲げてきたことと、低価格だが低スペック、低品質が多かった他社のSIMフリースマホとは対極的に、プレミアム戦略を打ち出してきた点がご理解いただけたのではないかと思います。この戦略はずっと続けてきましたし、今後もぶれません。
――J-CASTニュースが2年前にインタビューした際、「ファーウェイは今のところ、日本の消費者の間で知名度が高いとは言えません。ただ、必ずしも『ナンバーワン』が目標ではない」とおっしゃっていました。この2年の間に、状況は変わってきたのではないですか。
呉 当社は、端末の分野では「サバイブする(生き残る)」が目標だと常に言ってきました。今も変わりません。BCNの調査で、2017年上期のSIMフリースマホのカテゴリーで1位となれましたが、これにより日本市場でこのままずっと事業を展開できる基礎が盤石になったわけではありません。かつて携帯電話(ガラケー)で何年もトップに君臨していたメーカーが、今や事業から撤退している例もあります。順位は追い求めず、長期的な視点で日本の消費者にベストな端末とソリューションを提供する姿勢を続けていきます。
――2年前のインタビューでは、日本は「アップルの国」だと、「アイフォーン(iPhone)」の人気の高さを表現していました。今ではどうでしょう。
呉 状況はさらに進行している気がします。日本市場におけるiPhoneのシェアは下がってはいるようですが、実際にアクティブになっているスマホはiPhoneが多く、日本では絶対的な地位にあると感じます。ただ、SIMフリースマホの市場も変化しています。従来型携帯電話を使っていたユーザーがSIMフリースマホに乗り換え始めてもいます。