「東証1部」と言えば日本を代表する有良企業の代名詞でもあり、上場されているその株式(2017年7月末時点で2024銘柄)が日々投資家に売買されている。また、これに準じる立場の「東証2部」(同524銘柄)が存在する。最近、この東証2部銘柄への投資資金流入が加速しており、全銘柄の株価から算出する「東証2部指数」が過去最高値を連日のように更新し、意外な活況ぶりを示している。
東証2部は「東証1部予備軍」のような中堅企業が多く存在し、「1部昇格」を果たす会社も少なくない。一方、創業間もない新興企業が上場する際には条件が比較的緩い東証マザーズのケースが多い。東証2部はマザーズに比べると、歴史がそこそこあって業績が安定した企業が目立つという特徴がある。
「都落ち」銘柄もあるが
一方、東証1部は有良企業の集まりとは言うものの、その全体の株価の動向を反映する東証株価指数(TOPIX)は足元で1600ポイント前後、優良225銘柄で構成する日経平均株価も2万円前後の膠着状態にある。個別によく見れば成長を期待できる銘柄ももちろんあるのだが、思うようには株価の値上がりが見込めず投資妙味が薄れているのが実情だ。こうしたなか、東証2部企業群は1部より規模は小さいとはいえ、上場したのに赤字体質から抜け出せない企業が散見されるマザーズよりは投資家にとって物色意欲が沸きやすい、というのが昨今の株式市場の傾向と言えるようだ。株数自体が少なく流動性が低いことなどから機関投資家は手を出しづらく、個人投資家に人気が高い。
1969年に算出が始まった東証2部指数は、今2017年2月に06年以来、約11年ぶりに最高値を更新して3月にかけて6000ポイントの大台乗せ。4月にいったん踊り場を経験したが、その際の5400ポイント台から再度上昇に弾みがつき、7月には連日のように最高値を塗り替えるにぎわいを見せ、27日には6342.84ポイントの最高値を記録。週明け後も6300ポイントをはさむ高値圏で推移している。
東証2部と言えば、経営危機に陥って電子機器受託製造の世界最大手である台湾の「鴻海(ホンハイ)精密工業」に買収されたうえ、2016年3月末に債務超過(資産をすべて売却しても負債を返済しきれない状態)だったために東証のルールによって同年8月に1部から降格したシャープのような「都落ち」銘柄もある。17年8月1日には、経営再建中の東芝も3月末に債務超過だったため2部に降格したところだ。
時価総額の大きいシャープのような銘柄は2部指数に与える影響も大きいが、シャープの株価は今春以降は伸びが鈍化しており、2部指数の連日の最高値への貢献度はさほど高くない。このことはシャープ以外の2部銘柄が積極的に買われていることを示している。
上昇余地があるかどうかは...
それでは株価が上昇している2部銘柄とは具体的にどんな会社か。最近市場で話題になったのが、殺虫剤など衛生薬品を製造・販売するフマキラーだ。強い毒を持つヒアリの日本列島上陸で注目され、株価が一時高騰した。外食産業で知名度があるのは、「立ち食い」が特徴のチェーン店「いきなり!ステーキ」などを運営するペッパーフードサービス。7月14日に2017年12月期の業績予想を上方修正し、連結純利益は前期比2.2倍の12億円としたことなどが好感されている。このほか、フィットネスジムチェーンなどを展開するRIZAPグループ傘下入りで業績改善が期待される和装品商社の堀田丸正と補整下着販売のマルコは、年初から株価が3倍ほど上昇している。これらの会社は「すき間市場で存在感が大きい」傾向が共通している。
兜町では2部銘柄が買われている要因について、「さほど過熱感がないことが安心感を呼んでいる」(国内中堅証券)との指摘が聞かれる。2部銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1.3倍程度で、1部とあまり変わらない。PBRは株価の時価総額が純資産の何倍かを示すもので、異常の買われ方をすれば倍率も高まるわけだが、今のところ異常さは示していない。
ただ、この先も2部銘柄に上昇余地があるかどうかについては見方が分かれる。米景気の好調さなどからグローバル企業の多い1部銘柄に見直し買いの動きが移ることが考えられる一方、2部銘柄も発表が本格化する2017年4~6月期の業績次第では一段の上昇の可能性も十分にあるためだ。まずは1部、2部銘柄の4~6月期決算の内容に注目が集まりそうだ。