日本は水泳世界選手権で3大会ぶりに「金メダルゼロ」に終わり、先人たちから厳しい視線が注がれている。
特にエースとして期待された萩野公介(22)=ブリヂストン=や、新鋭の池江璃花子(17)=ルネサンス亀戸=には「消極的なレース」「もっとがむしゃらな姿が見たかった」と名指しで喝が飛んだ。
萩野に対し「消極的なレースに終始した」
ブダペストで開催された世界水泳で日本勢のメダル獲得数は銀4、銅3個の計7個だったが、金は0個という結果で2017年7月30日に閉幕した。
萩野は400個メでトップのケイリシュ(米国)と6秒75差がつく4分12秒65。前半から出遅れて巻き返せず、リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いた種目を6位というまさかの結果で終わった。萩野は「全然勝負になってなかった」と振り返った。その前の200個メでは今大会自身唯一のメダルとなる銀を獲得したが、発した言葉は「悔しい」だった。大会を通して苦しんでいた。
萩野は16年9月に右肘を手術し、約半年間実戦から遠ざかった。だがそれを差し引いても、元日本代表コーチで日本水泳連盟常務理事の設楽義信氏は萩野の400個メに「泳ぎ込み不足を自覚しているのか、最後まで自信を取り戻せずに消極的なレースに終始した」と厳しいコメントを8月1日の産経新聞に寄せた。
北島康介氏(34)も同日の日刊スポーツで萩野について「勝てる相手に負けた」として叱咤。不調な時の「割り切りができない。0か100か」しかないとメンタルの不安定さを指摘し、大会期間中にわずかでも修正できるよう「粘りがほしい。何くそというか」と未熟さを感じている。
萩野のメンタルをめぐっては象徴的な場面があった。第1泳者をつとめた4×200メートルリレーで自己ベストの日本記録より2秒遅く6位と出遅れ、最終的にチームは5位に終わった。悔しがる萩野に瀬戸大也が「笑顔の方がいいよ」と声をかけると、その場で四つん這いになって泣き崩れた。
男子は6個、女子は1個
男子6個、女子は大橋悠依(21)の銀1個のみに終わった。4月の日本選手権で史上初の5冠を達成した池江は今大会メダルに届かなかった。
まだ17歳。世界の壁は厚いが、アテネ五輪金メダリストの柴田亜衣氏(35)は1日の読売新聞朝刊で池江に対し「もっとがむしゃらな姿を見たかった」と不満を述べた。得意の100メートルバタフライではメダルを狙ったが6位に終わり、試合後号泣。柴田氏は「すごく悔しそうだったが、その後の自由形などは淡々としているようだった。世界レベルではメダル争いは難しかったかもしれないが、思い切った、挑戦するレースを見せてほしかった」と、試合に臨む姿勢に疑問符をつけた。
設楽氏は上記産経新聞で、金ゼロの日本チームについて「期待値を大幅に下回ってしまった」と残念がった。「自己ベストを上げる必要性を痛感させられる大会だった。トップを争う選手は余裕を持って予選を泳ぎ、準決勝で入れ始めた力を決勝で爆発させる。速い自己ベストを持っているからこそ可能な流れで、日本勢もそのレベルを目指してほしい」と世界との差を強調した。
大会後、平井伯昌・代表ヘッドコーチも「日本のリオ五輪メダリストが伸び悩む中、海外勢の記録が伸びた。危機感を感じている」と世界との差を痛感。「強化は根本的なところから考え直さないといけない」とし、立て直しは急務だ。