【林修の今でしょ!講座】(テレビ朝日系)2017年7月25日放送
「最新研究で判明『睡眠負債』を徹底解明SP」
仕事に家事、育児などで、睡眠時間を確保するのがなかなか難しい毎日。しかし睡眠不足が続くと病気のリスクが高まり、知らず知らずのうちに命を縮めているおそれがある。
世界一の睡眠研究所である、米スタンフォード大学の医師・西野精治氏が番組のために緊急来日し、誰でも簡単にできる睡眠の質を高める方法を伝授した。
起きたら手足を冷やすべし
まずは質の良い睡眠が取れているかのチェックだ。
(1) 朝目覚めが悪い
(2) お昼無性に眠たくなる
(3) 夜なかなか寝付けない
(4) 休日に普段より長く寝る
(5) 常に体がだるい
(6) ちょっとしたことでイライラする
(7) 最近仕事でミスが多い
1つでも当てはまると、睡眠の質が悪い可能性がある。
最高の睡眠を取るには、最も眠りが深く、睡眠中の成長ホルモンの約8割が分泌される寝始めの90分が最も重要だ。何時間寝ようが、最初の90分が正しく眠れていないと、それ以降の睡眠が乱れ、満足な眠りが得られない。
寝始めに熟睡するため、西野氏が習慣にしている行動がある。
まずは朝起きたら、できるだけ決まった時間にカーテンを開けて太陽の光を浴び、体内時計をリセットする。目を覚ましても体の細胞が眠ったままだと、夜の寝付きが悪くなるので、起きている時に体を覚醒状態にしておくのが重要だ。浴びる時間は15~20秒程度でよい。
夜の睡眠の質を高めるには朝の眠気を抑えるのが大切だ。手足を冷やすと刺激となって眠気が抑えられるので、西野氏は起きた後に水で手を洗い、裸足で過ごす。
「寝る前のホットミルクで安眠」は間違い!?
夕方には軽い運動をするのがオススメだ。運動によって体温が上がり、その後下がった時に入眠すると寝付きやすい。激しい運動をすると脳が興奮してしまうので、あまり疲れない適度な運動でリラックスするのがよい。西野氏は仕事が終わった17時頃に15分程度散歩している。
夜は寝る90分前に入浴する。湯温40度の風呂に15分間浸かると体温が0.5度上がり、90分かけて体温が元に戻る。体温が低い状態になったところで布団に入るとよく眠れる。
寝酒はよくないと思われがちだが、ビールならビン1本、日本酒なら1合程度であれば入眠効果が得られる。
寝室は寝るのに集中できるようシンプルにする。夜中に目が覚めた時に時計が目に入ると「まだこんな時間か」などと考えて不安になってしまうので、時計は倒して寝るとよい。
昼寝をする場合は、夜の睡眠に支障が出ないよう30分以内にとどめよう。ベッドで寝ると寝すぎてしまうので、西野氏は机に顔を伏せて昼寝している。短時間の昼寝はその後のパフォーマンスを上げる効果が期待できる。
寝る前に1杯ホットミルクを飲むとよく眠れると言われているが、実は間違い。ホットミルクが眠気を誘う効果を発揮するのは、飲んでから約15時間かかると最近の研究で明らかになった。体温調節の観点からすると、寝る前はむしろ冷たい飲み物が効果的だ。
美肌のためにはこの時間に寝るのがよいとして、22時~深夜2時が「肌のシンデレラタイム」と呼ばれているが、そんな時間は存在しない。時間帯に関係なく、眠り始めに肌によい成長ホルモンが分泌されている。
睡眠不足は予防接種の効果もなくす
米国の研究では、7時間睡眠の人が6年先の死亡率が最も低く、7時間より短い睡眠時間だと死亡率が約1.3倍高くなるという結果が出ている。西野氏も22時に寝て5時に起きる7時間睡眠を実践している。
7時間未満の睡眠では、認知症のリスクも約1.6倍になる。西野氏の実験では、マウスに睡眠制限をかけると、認知症のうちアルツハイマー病の原因とされる「アミロイドβ」という物質が頭の中に沈着した。
アミロイドβは日中の活動で発生する脳の老廃物で、神経細胞を傷付け、脳の働きを衰えさせる。寝ている間に排出されるので、睡眠と認知症に関係があるというわけだ。
6時間以下の睡眠では、女性は乳がんのリスクが約1.7倍、男性は前立腺がんのリスクが約1.4倍になる。
通常、体内にがん細胞ができると、免疫細胞が攻撃して抑え込む。睡眠不足だと免疫細胞の働きが鈍くなり、がん細胞が増殖する。
0時~5時はがん細胞ができやすい時間帯だが、寝ていれば免疫細胞が活性化してやっつけてくれるので、この間は寝ていた方がよい。
5時間以下の睡眠では、風邪などの感染症のリスクが約4.5倍になる。睡眠中に体内で免疫力を上げるので、時間が足りないとその分病気にかかりやすくなる。
インフルエンザなどの予防接種をした時も、寝不足だと抗体ができづらくなる。少なくとも予防接種した日は十分な睡眠を取るようにしよう。
糖尿病のリスクも約2倍になる。睡眠不足だと血糖値を下げるインスリンの分泌が減るためだ。不眠症患者に糖尿病の人が多いという報告もある。
睡眠不足は、休みの日などにまとめて長時間寝る「寝だめ」では解消できない。さらに、目を閉じていても眠っていなければ病気のリスクは下がらない。
西野氏の習慣を参考にしつつ、毎日同じ時間に寝るよう心がければ、慢性的な睡眠不足の解消が期待できる。