同じ日に知人に立て続けに会うと、どちらとも開口一番、その朝、トランプ大統領がつぶやいたツイートについて話し始めた。
二人ともリベラルなニューヨークに住んでいるものの、政治的スタンスや思想は、正反対だ。
選挙中は「LGBTのために戦う」
トランプ大統領は2017年7月26日、3回にまたがるツイートで、「将官や軍事専門家と相談した結果、トランスジェンダーの人たちが、いかなる形でも米軍の職に就くことを認めない」とつぶやいた。
トランスジェンダーは、生まれた時の体と心の性が一致しない人たちだ。
大統領はその理由について、「米軍は圧倒的な勝利を収めることに集中すべきだ。トランスジェンダーの人たちがもたらす膨大な医療費や混乱が、負担になってはならない」と強調している。
オバマ前政権は16年、「世界で最も優れた戦闘部隊を維持するには、役立つすべての人材が必要である」とし、トランスジェンダーの米軍への入隊を禁じる規則を撤廃すると表明したばかりだった。
シンクタンク「ランド研究所」によると、米軍で常時任務にある約130万人のうち、トランスジェンダーは1,320人から6,630人という。
知人のジョン(60代男性)はゲイ(同性愛者)で、長年連れ添ったパートナーとともに養子の息子を育て上げた。
トランプ大統領を「まぬけ(moron)」で「うそつき(liar)」だと酷評してきたジョンは、投げやりになっている感じだ。
「今回のツイートが本気なのかどうか。トランプの言うことはコロコロ変わるから、もうまったくわからないよ。僕たちのようなLGBT(性的マイノリティー)のために闘うと、選挙運動中は言っていたじゃないか」
このあと、たまたま訪ねた別の知人(60代男性)は、保守的なキリスト教徒で、トランプ支持者。息子は元海兵隊員だ。
「今もトランプ氏が、ツイートで個人や団体を攻撃し続けていることに、だんだんうんざりしてきた」と話しながらも、「今朝のツイートには僕も賛成だ」と言い切る。
「軍隊は戦いの場で、社交の場ではない。リベラルのプロパガンダに洗脳される必要はないだろ? 男性の体を持つ女性兵士と一緒にシャワーを浴びるのは、大多数の女性兵士に気の毒じゃないか。しかも、性別適合(性転換)手術やホルモン投与の費用を、僕の税金で払ってほしくはない。
国のために戦う権利を、誰にでも平等に与えるべきだ、と擁護派は言うけれど、体格や体力の厳しい検査に合格しなければ入隊はできない。だから、もともと平等じゃないんだよ。それより米軍には、北朝鮮のような差し迫った懸案事項があるんだ。僕が日本人に住んでいたら、北朝鮮の脅しが恐ろしくてたまらないだろう」