普通分娩に比べて死亡率が高いわけではない
無痛分娩が行われる割合は、米国で61%(2008年調査)、フランスでは80%(2010年調査)に達すると、日本産科麻酔学会がサイトで紹介している。一方日本では2007年度調査で全分娩の2.6%だったが、日本産婦人科医会の全国調査では2016年に実施率が5.2%だったと、2017年7月20日付の毎日新聞電子版が報じている。単純計算で、9年で倍増したことになる。また無痛分娩が行われる医療機関の58%が、規模の小さい診療所が占めたという。
厚生労働省研究班は2017年4月16日、医療機関が無痛分娩に対して十分な体制を整えることを求めるよう提言した。ただ当時、厚労省地域医療計画課の担当者はJ-CASTニュースの取材に、「普通分娩に比べて死亡率が高いというわけではなく、今回の提言は、無痛分娩は危険だなどと言っているものではありません」とこたえている。
今回の事故でも、ツイッターを見ると、無痛分娩が危険という誤解が広まるのではないかと危惧する意見が見られる。
小児科医の森戸やすみ氏は朝日新聞デジタル「アピタル」7月24日付記事で、無痛分娩を取り上げている。自身は自然分娩で出産経験があるが「ものすごく痛かったです」。一方で「そういった出産の痛みを神聖化する人たちもいます」と指摘する。だが無痛分娩の医学的なメリットはいくつもあり、「苦労があるほど、子どもをよりかわいがれるというのは神話にすぎないでしょう」という。
記事の最後に森戸氏は、「無痛分娩が、なんだかわからない怖いものとしてではなく、正しく理解され、出産の苦労を減らす普通の医療になることを願います」と締めた。