毎年、夏休み期間中に放送されるラジオ番組「夏休み子ども科学電話相談」(NHKラジオ第1放送)。子どもから寄せられた素朴な疑問や興味に対し、各分野の専門家が回答する名物企画だ。
大人でも知らない質問や、ほっこりするような可愛らしい質問、専門家が回答に困るような鋭い質問まで、予期できない展開が繰り広げられるため、大人のファンも多い。ツイッター上でも「#夏休み子ども科学電話相談」のハッシュタグで、番組の感想がつぶやかれるなど、盛り上がりを見せている。
チューリップ、「本気になったら種も採れる」
放送2日目、2017年7月25日には、小学4年生の男児からこんな質問が寄せられた。
「種と球根は何が違うの?」
小学校1年生の時には球根からチューリップを育てたが、4年生では種からゴーヤを育てたため、疑問に思ったのだという。
この質問に回答したのは、甲南大学の田中修・特別客員教授。違う植物では考えにくいため、チューリップを例に説明をすることにし、「あれは本気になったら種も採れるの」と伝えた。
少年の口からは思わず「えっ」と驚きがこぼれ、ラジオを視聴していた大人の間にも
「チューリップって種あったのかー!!!」
「おっちゃん恥ずかしながら初めて知ったよ」
と衝撃が走っている。ツイッターなどで書き込む人が次々と現れた。たしかに、チューリップといえば球根のイメージが強く、種は見たことがないという人も多そうだ。
田中先生によると、チューリップは種でも球根でも繁殖することができるが、種を作ると球根に十分な栄養が行き渡らないため、種は作らせないのだという。1輪のチューリップにつき、採れる球根は5個くらいだが、種は少なくとも50個くらいできるとも明かした。
ではなぜ、球根が主に用いられるのか。種よりも早く花を咲かせるということもあるが、球根の最大の利点は、「何色の花が咲くかっていうのは全部わかってる」こと。チューリップの場合、花壇などのデザインで花の色を計画的に配置する必要性を求められることが多いためだ。
「例えがアバズレた感じw」
小学校の理科でも習う内容だが、植物はおしべの花粉がめしべに受粉することで結実する。蜂や蝶などの昆虫や風といった自然受粉では、どのチューリップの花粉が付くかは分からない。
田中先生は、この事を子どもでも分かりやすいように伝えたかったのだろう、
「種を作ったチューリップがお母さんやとしたら、花粉はどこの誰や分からんお父さんの花粉が付いて種って出来上がってんの」
と説明した。「種はお母さんとお父さんの性質持ってる」ため、どんな花が咲くかは分からないが、品種改良には種のこの性質が利用されるという。
子どもは素直に納得したようだが、大人は「どこの誰や分からんお父さん」という表現に反応。
「盛大に笑った」
「重すぎるワード」
「例えがアバズレた感じw」
「なんと不穏なチューリップの種事情」
など反響を呼んでいる。
今回チューリップから種が採れることを知って、「来年やってみよう」と意気込む人もいるようだが、日本一の球根生産地である富山県のホームページによると、
「種子をまいて花が咲く大きさの球根に育つのに約5年かかります。チューリップは球根が大きくならないと花が咲きません」
という。種を採取したはいいものの、花を咲かせるまでには相当な根気が必要とされそうだ。
この日はほかにも、「どうしたら虫がこわくなくなるの?」「どうして太陽は回らないのに、地球は回るの?」「どうしてチョウチンアンコウのオスには光る部分がないの?」といった質問が子どもたちから寄せられていた。