農業トラクターも自動運転 「完全無人型」も視野

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   自動運転と言えば、乗用車を思い浮かべる人が多そうだが、主な農業機材メーカーも自動運転化に取り組んでおり、ここへきて実用化が見えてきた。高齢化と人手不足の問題解消の一助となることが期待されている。公道を走るのが主目的ではないので乗用車より実現しやすい面もあり、2018年度には本格的な販売が始まりそうだ。ただ、2016年来の農業改革で「農業資材(機材)価格の高止まりが農家を苦しめている」と指摘されただけに、量産化などでメーカーには価格低下への努力が求められる。

   クボタは2017年6月、自動運転トラクターの試験販売を始めた。試験販売とはいえ、大手による市販は国内初めてのことだ。18年に本格的に販売開始する予定。全地球測位システム(GPS)を活用することで農機が自らの位置を把握し、自動運転する。現状では安全を確保するため、インターネットなどを通じた「遠隔監視」ではなく、人間が肉眼で監視しながら使う必要がある。そのため1台に人が乗り、もう1台の無人のトラクターと2台同時に走行させる使い方などが想定されている。

  • 農業従事者の高齢化と人手不足の一助となるか(画像はイメージです)
    農業従事者の高齢化と人手不足の一助となるか(画像はイメージです)
  • 農業従事者の高齢化と人手不足の一助となるか(画像はイメージです)

農水省、安全基準定めた指針を策定

   人が乗っているトラクターも、人間は監視役でトラクターは自動運転で畑を耕すなどの仕事をする。クボタは2台一緒に作業した場合、30~50アール(3000~5000平方メートル)の農地で作業時間を約3割短縮できるとしている。ただ、価格は通常より5~7割高く、970万~1100万円(税別)となる。零細農家に新たな投資を負担してまでの必要性は乏しそうだが、大規模な農業法人なら人件費削減などの効果を見込めそうだ。

   こうしたメーカーの動きも背景に、農林水産省は3月、自動運転トラクターなどの安全基準を定めた指針を策定。2020年までには人の肉眼ではなく遠隔監視で稼働できるよう制度を整備する方針とされる。クボタはこれに合わせ、完全無人型の農機を発売したい考えだ。

   一方、井関農機は17年6月、自動運転トラクター「T.Japan」を18年に発売すると発表した。近くで作業する有人機が、無人機をリモコンで操作する形の連携スタイルを想定している。リモコンで動くなら自動運転とは言えないがそうではなく、無人機はセンサーなどで機械の傾きや位置を測定し、適切に耕すなどの作業を自動で行う。1ヘクタール(1万平方メートル)の田畑での作業効率は従来の1.5倍以上。価格もただ上げるのではなく、1.5倍を下回るよう努力するという。

いかに価格を抑えるかが課題

   ヤンマーも自動運転トラクターなどの農機開発を急いでいる。ヤンマーは6月に2号機が打ち上がり、18年度から運用される準天頂衛星「みちびき」に期待する。従来よりもGPSの精度が向上することから、これに合わせて農機の性能が上がれば、農作業の効率が進みそうだ。

   自動運転は乗用車でも動きが急だ。独アウディは7月11日、世界で初めて「レベル3」(条件付きの自動運転)と呼ばれる段階の自動運転車を今年秋に発売すると発表した。中央分離帯のある高速道路を時速60キロ以下で走行している時、かつ法律でこうした環境下での自動運転を明確に認めているドイツ国内に事実上限定されるとはいえ、運転者は公道上でありながらもハンドルから手を離してテレビ視聴などが可能になる。これが未来の話ではなく、現実となっている。国内でもソフトバンク系の自動運転技術開発会社「SBドライブ」が完全無人の自動運転バスの実験を続けており、まずは18~19年をメドに工場など私有地内での活用を想定したビジネスを始める計画。いずれは公道でのバス運行につなげたいとしている。

   こうした動きと比べても、主要な作業が農地内に限られる農機の自動運転化は進めやすいテーマと言える。実際、トラクターだけでなく、芝刈り機や草取り機などの自動運転化の開発も進められている。大規模化を進めたいが人手不足に悩む農業法人などにとっては朗報だが、いかにして農機の価格を抑えるかが課題。「卸売り」の役目を担う農協も含めた農業界全体の取り組みも必要となりそうだ。

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