協定発効は数年先というのが大方の見方
実際、関税は概ね決着したが、調整が難しいテーマの決着は先送りされた。代表的なものが、進出した企業とその国との紛争処理手続き。進出先の急な制度変更で企業が損害を被ったような場合の賠償をめぐる手続きについて日欧の主張は平行線をたどった。「大枠合意」になったのは、こうした折り合いがつかない項目が残ったからだ。
日欧交渉を報じる記事を振り返ると、2016年中は「大筋合意を目指す」など、「大筋」だったが、2017年が明けて1月から、各紙の紙面では「大枠合意」という言葉に取って代わられた。安倍首相が2016年暮れに「大枠合意」という単語に初めて言及したのがきっかけだった。
関係筋は、1月のトランプ大統領就任をにらみ、日欧が結束して自由貿易の推進をアピールしたいという思惑で、双方が一致したことが背景にあり、「5月の主要7か国首脳会議(G7サミット)、そして7月の20か国・地域(G20)首脳会議の開催地が、それぞれイタリアとドイツであることもあって、この場での妥結をにらんだ交渉スケジュールを模索した」という。
最終的な交渉は、5月下旬、G7サミットのため訪欧した安倍首相とEU首脳との会談で早期合意を確認し、6月に詰めの交渉をするという日程を設定。6月13日からEU側首席交渉官が来日、30日、7月1日には閣僚協議も行い、7月5日に閣僚協議を欧州で再開し、決着した。
「日欧でかなり無理を承知で『妥結』に持って行った『作戦勝ち』は評価できるが、最終的な合意には、曲折が予想される」(大手紙経済部デスク)。さらに、EU側は加盟28か国が承認する必要があり、協定発効は数年先というのが大方の見方。チーズやワインが安くなる、といった消費者がメリットを享受するまでには、なお時間がかかりそうだ。