「言ってもいないことに大きな声で、しかも『出ていけ』はないだろう」。元衆院議員で「新党大地」代表の鈴木宗男氏がブログでそう言及したのは、参議院予算委員会の閉会中審査における民進党・桜井充参院議員の発言だ。
「加計学園問題」で答弁した山本幸三・地方創生担当相に対し、桜井氏が「いらない。出ていけよ」と声を荒らげた。鈴木氏は「懲罰にすべき言動」と桜井氏の振る舞いを真っ向から非難するとともに、「メディアの批判があると思いきや、2日経っても何の反応もない」と報道の姿勢にも苦言を呈している。
「いらない。出ていけ。出ていけよ」と指をさして声を荒らげる
安倍晋三首相が出席した2017年7月25日の参院予算委の閉会中審査では、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画をめぐり、桜井氏が質問に立った。今治市が情報開示した資料をもとに、「我々は『加計ありき』だと思うのですが、総理、この資料を見てどう思いますか」と問いかけると、立ち上がったのは名指しされた安倍氏ではなく山本氏だった。
すると桜井氏は「総理に聞いている。総理に聞いている」と繰り返し、激高。山本氏に対し「いらない。出ていけ。出ていけよ」と指をさしながら声を荒らげた。参院予算委員長に指名されて山本氏が答弁したが、桜井氏は「山本大臣っていうのは本当に質疑の妨害しかしないんですから、答弁に立たないでくださいよ」と不満を述べていた。
こうした場面に、鈴木氏は27日のブログで、まず「答弁者を決めるのは委員長である。よく野党民進党の人は『総理に』というが、委員長しか答弁者を決めることは出来ない。これは議会の常識である」と指摘。さらに桜井氏の別の発言にも「勘違い」があると主張した。
「いま山本大臣、看過ならぬことをおっしゃいましたからね」
桜井氏は閉会中審査で、加計学園は獣医学部の設置認可がおりる前に、「高圧受電設備」を申し込んでいたとして「まだ加計と決まっていないのに行われている。この点については総理、いかがですか」と問うた。そこで答弁に立ったのはまたも山本氏で「そういう細かいことを総理にお尋ねしても(答弁するのは)無理だと思います。それは私が担当しているわけでありまして、私に聞いていただければと思います」と答えると、これを桜井氏は強く非難した。
「いま山本大臣、看過ならぬことをおっしゃいましたからね。『そんな小さなこと』ってどういうことだよ。言ったよ今。『そんな小さなことは総理が答弁することじゃない』。我々が調べてきたことに対してそういう失礼なことを言うのはおかしな話じゃないか。失礼だよ。いいから。もうあなたは答弁結構だ。時間の無駄だ。時間の無駄だから出てくんなよ」
鈴木氏は、この場面での山本氏と桜井氏のやり取りについてブログで
「25日の桜井氏の発言で基本的に間違っているのは『小さいこととはなんだ、失礼だ、出ていけ』と言っているが、山本大臣は『そういう細かいことを首相に尋ねても無理だ。担当している私からお答えする』と言っている。『小さいこと』とは言っていない。事務的な細かいことなので担当の私からと言っているのだ」
と指摘し、桜井氏に対して
「言ってもいないことに大きな声で、しかも『出ていけ』はないだろう。この点、与党の理事もしっかり真意を国民に知らせるべきである。懲罰にすべき言動ではないか」
「発言の削除や、委員会での注意など民主的手続きをすべきでないか。こうしたことを一度見過ごすと慣例となって益々国会が軽いものになってしまうと心配するものである」
と主張している。
ツイッターでは1000件以上のリプライが
また、鈴木氏はメディアの姿勢にも「この桜井氏の神聖なる国会の場に相応しくない発言に対し、メディアの批判があると思いきや、2日経っても何の反応もない。こうした現状を不思議に思うものである」と不満を述べている。
閉会中審査自体は各ワイドショー番組でも取り上げられたが、桜井氏の「出ていけ」発言については鈴木氏のように批判的な向きは多くはない。
たとえば、25日「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)では、「出ていけ」の場面を国会のVTRで放送しながら「指名されてもいないのに安倍総理に代わって答弁しようとする山本地方創生担当大臣に、怒りが収まらない民進党・桜井議員」とのナレーションを挿入。同日「news every.」(日本テレビ系)でも「山本大臣が答弁にたったことに桜井議員が激怒する場面も見られました」とナレーションされるだけだった。
同日「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)では、松野博一・文部科学相も野党議員が「総理に」と言った場面で答弁したこととあわせ、「質問者が総理を指名しているにもかかわらず、代わりに答弁に立つ大臣たち。昨日の総理発言(1月20日の旨)の影響か」とナレーターが述べている。同日の「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(CBCテレビ系)では、政治評論家の有馬晴海氏が「山本大臣が出てくるのは、総理がちょっと答えにくいのを自分が何回も出て行って時間稼ぎをし、質問を終わらせるテクニックだと思う」と推測していた。いずれも、山本氏の「代打」の理由について分析しているが、桜井氏の言動の是非は特に触れていない。
一方で、ツイッターでは批判的な声も少なくない。今回の閉会中審査で質問に立つ旨を桜井氏自身が告知した25日朝のツイートには、その後29日までに1000件以上のリプライ(返信)が殺到。「大臣に対して『出て行け!』ですか? 本当に品性の欠片も無い人ですね貴方は」「全国中継している国会において、大臣に対して汚い言葉で恫喝紛いの行為。 次世代を担う子供達が見ていたとしたらどう受けとるでしょう」「山本大臣は『細かいこと』と言ったのです。『小さいことと言った』と嘘をつくのはやめてください」などの厳しい声が寄せられている。