米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は2017年7月25、26日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、投票権のある9人の全会一致で金融政策の現状維持を決めた。追加利上げを見送った。
FRBは前回(6月)会合で、今年2回目の利上げに踏み切ったばかり。金融引き締めの影響を見極めるため、今回は利上げを見送るとの見方が大勢だった。これを受けて、米ドル円相場はドルが売られて円が買われる、「円高ドル安」に動いた。
ドル、「買い」と「売り」が交錯
ここ数日のドル円相場は、7月25、26日のFOMCの声明待ちの様相だった。米ドル円は7月11日に1ドル114円49銭を付けたものの、ジリジリ円高に。24日夕には110円61銭まで上昇した。その後は111円を境に行ったり来たりしたが、25日夜にユーロ/ドルが1ユーロ1.1711ドルを付けたことをきっかけにユーロ売りドル買いが強まり、それに連れてドル円も111円50銭を超える円安基調を継続。26日早朝には一時112円台に到達した。
26日17時のドル円相場は、前日(17時)と比べて64銭円安ドル高の1ドル111円83~85銭で取引を終えた。
7月25日夜に発表された米国の7月の消費者信頼感指数は121.1で、前月の117.3(改定値)から上昇して、4か月ぶり高水準だった。これは円安ドル高の材料になるはずだったが、その効果もほとんどなかった。
米ドル円相場が右往左往するのは、FRBのイエレン議長の発言に個人投資家らが反応しているから。外為どっとコム総合研究所調査部の神田卓也部長は、「投資家の強気と弱気の両面が見られる相場といえます」という。
6月に2度目の利上げに踏み切ったイエレン議長だが、7月12日の議会証言では市場に対して『ハト派』(利上げを急がない)的なスタンスを示した。これをきっかけにドル売りが進み、米ドル円相場は24日夜に111円割れまで下げたわけだ。
「イエレン議長が本当に『ハト派』なのかどうかはわかりませんが、FOMCの思いをマーケットがどう受けとめ、どう汲みとるのか、(投資家は)予測がつかないところがあります」と指摘する。
豪ドル高に拍車? FOMCの「あいまい」判断
そうした中での米FOMCの利上げ見送りの発表だ。FOMCは、短期金利の指標で、銀行間で資金を貸し借りする際に使われるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、年1~1.25%に据え置いた。
FOMC後の声明によると、約4兆5000億ドル(約500兆円)まで膨らんだ保有資産の縮小を「比較的早期に始める」と明記。6月の前回会合では「年内に着手する」としていたが、今回はさらに一歩踏み込んだ。
その一方、インフレの現況判断では、物価上昇率が前年比でエネルギー・食品を除くコア指数でも鈍化していることを指摘。物価の伸び悩みを強調した。これが実質的な物価見通しの下方修正と受けとめられた。
前出の外為どっとコム総研の神田卓也部長は、「ドル売りを招いたのは、ここの判断ですね。物価見通しは後退したのに利上げの方針は変えないという、はっきりしない判断で、警戒感だけが強まりました」とみている。
そんなことだから、FX投資家の目も米ドルから離れつつある。神田部長は、「今回のFOMCは思わぬところに影響が出ていた」と指摘。それがオーストラリアドル(豪ドル)だ。「最近は米ドル円相場の動きが鈍いこともあって、(FX投資家にとっては)あまり妙味がありません。そこで、豪ドルやユーロに関心が移っているというわけです」と説明する。
米ドルとともに、円も日本銀行による金融緩和策が長期化することで売られやすい状況にある。そのため、豪ドルやユーロが買われやすくなっているというのだ。
たとえば、7月26日のFOMCを受けて豪ドル/米ドルは、2015年5月以来の1豪ドル0.80米ドル台を付ける水準まで、豪ドル高が進んだ。一方、豪ドル円も円安/豪ドル高の様相で、7月27日には1豪ドル88円後半~89円前半で推移している。
円が売られ、豪ドルが買われる展開で、神田部長は「豪中央銀行が豪ドル高をけん制したにもかかわらず、なお高値を更新する勢いがあります。FOMCが豪ドル高を後押ししているような状況です」と、話している。