猛暑が日本列島を覆っているが、「アツ~い!」と感じているのは日本人だけでない。訪日外国人も日本の暑さに参って、熱中症にかかる人が少なくない。名古屋工業大学、北見工業大学、東北大学サイバーサイエンスセンター、日本気象協会の合同研究グループは2017年7月25日、訪日外国人の日本の夏の熱中症リスクを試算することに成功したと発表した。
寒い国の人の体温上昇は日本人の2~3倍
外国人の出身地域を冷帯、温帯、熱帯に3区分し、それぞれの地域ごとのリスクを計算、啓発活動に役立てるという。
日本気象協会などの発表資料によると、2020年の東京五輪・パラリンピックをはじめ、真夏の大規模イベントを目当てに来日する外国人が増えることが予想される。過去に日本気象協会が在留外国人に日本で熱中症の症状を経験したことがあるかというアンケート調査を行なったところ、「熱中症を経験したことがある」という回答は全体の75.5%に達した。
そこで研究チームは、2016年に日本の夏(6~9月)を経験したことがある在留外国人の20~50歳の男女200人を対象に、気温が何度になると熱中症を気にし始めるかなど「日本の暑さ」に関する詳細なアンケート調査を行なった。そして、この調査結果をもとに、合同研究チームが2015年に開発した「熱中症リスク評価システム」を活用し、外国人の出身地域ごとのリスクを割り出した。「熱中症リスク評価システム」とは、乳幼児や高齢者など個人ごとの特性と気象条件を組み合わせ、コンピューターの計算式から1時間以内に熱中症にかかる危険度を表す技術だ。それを外国人の「体質」に応用した。
その結果、冷帯、温帯、熱帯の出身者ごとに次の特徴があることがわかった。
(1)冷帯出身者は汗腺数が少ないため汗をかく量に限界があり、体温上昇傾向が大きい。冷帯出身者が暑さになれていない場合には、日本人に比べ体温上昇は晴れた日で2倍、曇りの日では3倍になる。
(2)熱帯と温帯出身者では、体温上昇、発汗量について大きな相違は見られない。
(3)約50%の人が熱中症を気にし始める温度を比べると、熱帯地域の人は35度以上、温帯と冷帯地域の人は30度以上である。
冷帯地域の人の熱中症のリスクが高まることがわかった。