米国の音楽プロジェクト「Passion Pit(パッション・ピット)」のフロントマンを務めるマイケル・アンジェラコスが2017年7月24日、自身のツイッターで「(自身の)精神的健康のためにしばらく活動を休止する」と発表した。
アンジェラコスは17歳の時に「双極性障害」と診断され、現在も闘病中であることを以前から公表していたが、7月20日にやはり精神的な問題を抱えていたとされているLinkin Parkのボーカル、チェスター・ベニントンの自殺にショックを受け、今回の決断をしたという。
健康であることこそがアート
パッション・ピットは2007年から始まった音楽プロジェクトで、複数人のメンバーを加えてバンド形式で活動していたこともあるが、基本的にマイケル・アンジェラコスのソロプロジェクトとして、主にエレクトロポップやポストパンクなどのジャンルの音楽を発表してきた。
ファーストアルバムの「Manners」は米音楽チャンネルMTVなどで高く評価され、圧倒的とまではいかないまでもその音楽性は支持されていたが、2010年に自身がうつ状態と躁状態を繰り替えす「双極性障害」であると告白。
精神的に非常に不安定で精神病院への入退院を繰り返し、自殺未遂を起こしたこともあり、アルバム製作中も常に症状を抑制する薬が手放せなかったと当時の音楽雑誌のインタビューなどで語っている。また、ツイッターでも2012年には症状が悪化し電気ショック療法を受けるためにツアーをキャンセルしたことを明かしていた。
こうした自身の経験を踏まえてか、ミュージシャンのメンタルヘルスや医療面でのサポートを目的とした会社を今年立ち上げている。
しかし、チェスター・ベニントンの自殺後に自身のツイッター上で、「自分のメンタルヘルスを維持するのにここ何年も課題に直面している」とツイート。治療と両立するためにツアーのスケジュールを組むなど、精神状態と音楽活動のバランスを取るのに腐心してきたがそれも限界だとして、
「常に音楽を作り続けたい。そのための唯一の方法は懸命に健康を維持することだ。より健康であることはとてもアートなことなんだ」
と話している。また、自身の楽曲がダークさとポップさを兼ね備えており、それは双極性障害という精神疾患から生まれるものだと評価されることについて、
「音楽のバックグラウンドを飾るためにはどのくらい多くの(精神疾患のような)エピソードが必要なのか。あと何人のアーティストが死ぬ必要があるんだ」
とメンタルヘルスの状態を作家性と関連付けることに疑問を問いかけていた。
長期間の再発予防療法が必要
厚生労働省の精神疾患情報サイト「みんなのメンタルヘルス」は、双極性障害は精神疾患の中でも治療法や対処法が比較的整っている病気で、薬でコントロールすればそれまでと変わらない生活をおくることが十分に可能と解説。
ただし、適切な治療を受けず放置していると、何度も躁状態とうつ状態を繰り返し、人間関係や社会的信用、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれてしまう深刻な病気でもあると指摘している。
アンジェラコスも過去に治療を受けていなかった時期があり、恋人や友人などに迷惑をかけたり傷つけてしまったことがあると告白していた。
双極性障害は治療を途中でやめてしまうと再発してしまうため症状が治まっている時期も薬を飲み続ける必要があり、長期にわたる再発予防療法が必要となる。アンジェラコスはしばらく音楽活動に戻れない可能性も語りつつ、「パッション・ピットが大好きで、音楽をもっと愛している」とし、
「音楽活動に取り組むためにも、この問題(自身の双極性障害)を今の優先課題にする」
としている。