民進党の大西健介衆院議員が国会で行った発言で名誉を傷つけられたとして、美容外科「高須クリニック」を運営する愛知県西尾市の医療法人が民進党と大西氏らに対して計1000万円の損害賠償を求めた訴訟が思わぬ方向に「飛び火」した。
第1回口頭弁論の様子を伝えた2017年7月25日放送の情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)で、コメンテーターとして出演していた元宮城県知事の浅野史郎氏(69)が、大野氏の発言を「真実を言ったんですよ」と擁護。これに高須克弥院長(72)が激怒し、謝罪がなければ提訴することをツイッターで表明。番組側は謝罪に追い込まれた。
「詐欺まがいのビジネスをしているような印象を与える発言」
訴訟の対象になったのは、17年5月17日の衆院厚生労働委員会での大西氏の発言。医療分野の広告は内容に制限が多いため「陳腐」なものが多いとして、
「例えばイエス!○○(まるまる)と、クリニック名を連呼するだけのCMとかですね...」
「クリニック名や電話番号を連呼する広告は、患者がどの病院を選ぶかの参考になるものではない」
などと述べた。
7月24日に第1回口頭弁論が7月24日に東京地裁(河合芳光裁判長)で開かれ、高須院長も出廷。
「(大西氏が)詐欺まがいのビジネスをしているような印象を与える発言をした」
などと主張した。
25日の「ミヤネ屋」では、一連の経緯を伝えた後に浅野氏がコメントを求められ、
「これはね、名誉棄損で訴えたんでしょ?名誉毀損というのは、事実と違うことを摘示して、名誉を棄損するってんだけど、この言ったことは国会で言ったかどうかは別として、普通の平場(ひらば)で言ったとしても、これは、真実を言ったんですよ。だから、もしあるとすれば、『正直者!』と怒るようなもの」
と、大西氏の発言は名誉棄損にあたらないとの考えを示した。これに対して、司会の宮根誠司キャスター(54)が
「例えば、イエス!○○という例えばよくないですよ」
とフォローを試みたが、浅野氏は
「イエス!○○? いや、高須クリニックって言ったって構わないですよ」
と反論。宮根氏が
「悪徳というフレーズにまとめられるというので怒ってらっしゃる」
と述べたところで浅野氏が
「そんなの名誉棄損じゃないじゃないですか」
と言い返したところでCMに入った。
浅野氏としては、CMが「陳腐」だという論評が「名誉棄損にあたらない」という趣旨だったようだが、高須氏が主張しているような、大西氏が「詐欺まがいのビジネスをしているような印象を与える発言をした」点が「名誉棄損にあたらない」と発言したと受け止めた人も多かった。
「とりあえずミヤネ屋の提供降りるか」
高須院長は放送直後の7月25日夕方、「明確な名誉毀損です」などとして26日中に謝罪がなければ提訴する意向を表明。
「とりあえずミヤネ屋の提供降りるか。詫びを急いだほうがいいと思うけど」
ともツイートし、広告を引き上げることも示唆した。
26日に入って事態は進展。高須氏は9時14分、ミヤネ屋のチーフプロデューサーが
「浅野史郎さんは平謝りしてます」
などと伝えてきたとツイート。その旨を放送すれば「それで全てを許します」とした。
11時42分には、15時40分ごろにお詫びを放送するとプロデューサーから連絡があったとして、
「満足するものになるか期待。満足ならば提訴しないしスポンサーも続けると確約したぜ」
とツイートしていた。
「高須院長、これからも仲良くしていただけますでしょうか」
これを受ける形で、7月26日の「ミヤネ屋」では、司会の林マオアナウンサーが
「コメンテーターの浅野史郎さんが、高須クリニックについて、問題を抱えている美容外科であるかのように受け止められるコメントをいたしました。放送後、浅野さんに発言の真意を聞いたところ、そのような意図はなく、浅野さんが裁判の内容を誤解していたことによるもので、高須院長に対しておわびするとの気持ちを表されました。読売テレビとしましても、高須院長、ならびに視聴者のみなさまに誤解を与える放送を行ったことに対し、おわび申し上げます」
と謝罪コメントを読み上げ、宮根氏も
「大変申し訳ございませんでした。高須院長、これからも仲良くしていただけますでしょうか。是非ともイエス!とおっしゃっていただきたいと思います」
と続いた。なお、この日の「ミヤネ屋」では、高須院長とピコ太郎さんが共演する、高須クリニックのCMが流れていた。
高須氏は、番組の写真とともに
「ミヤネ屋謝罪してる。もらい事故なのに謝らせて悪かったね。全部許すぜ。なう」
とツイートし、矛を収めた。