厚生労働省は2017年7月24日、2016年夏に「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症し10日後に死亡した50代の女性が、野良ネコに咬まれたことで感染・発症した可能性があると発表した。
ペットのネコやイヌの血液や糞便からSFTS ウイルスも検出された事例があったことも確認されており、厚労省は体調不良の動物と接触する際には十分注意するよう呼びかけている。
これまで動物は感染源にならないと言われていたが
SFTSは2011年に中国の研究者らが発見した感染症で、2013年には日本国内でも感染例が確認されるようになった。SFTSウイルスに感染すると1~2週間の潜伏期間を経て発熱や下痢、嘔吐、腹痛、筋肉痛といった症状が表れ、重症化すると死亡することもある。厚生労働省によると有効な抗ウイルス薬はなく、対症療法が主体になるという。
国立感染症研究所のサイトに掲載された「感染症発生動向調査 SFTS症例の概要」では6月28日までに西日本を中心に266人の患者が報告されており、57人が死亡している。
患者の年齢層は、40~90歳代で、全患者の約95%が50歳以上となっており高齢者が多い。
これまでSFTSの感染源はウイルスを保有したマダニに咬まれることだと考えられており、哺乳類やマダニ以外の吸血昆虫から感染する例は確認されていなかった。
野生のイノシシやシカ、アライグマ、タヌキ、ニホンザル、ウサギなどの血中からSFTSウイルスに感染した痕跡である「抗体」が検出されたことはあったが、抗体自体に病原性はなく、ジビエなどで食べた場合の感染も確認されていない。
しかし、昨年夏にSFTSで死亡した女性の感染経路を調査したところ、マダニに咬まれた形跡がなく、体調不良の野良ネコを動物病院に運ぶ際咬まれていたことがわかった。このネコが感染していたかは確認されていないがSFTSと見られる症状は確認されており、感染症研究所はネコが感染源となったと推測している。
その後の調査で、SFTSの流行地でペットのネコやイヌ(室内・野外両飼育)が発熱や食欲消失といった症状を示す例も確認され、血液などからSFTSウイルスが検出。まれな例ではあるもののネコやイヌがSFTSに感染し、さらにその体液などから人が感染するリスクがあることも否定できない状態となっている。
今のところ、ペットから飼い主や獣医療関係者へSFTSウイルスが感染拡大したという例は確認されていない。
ペットも飼育者も体調変化に注意
ペットの感染を外見や症状だけから判断することは難しく、獣医療機関へ連れて行く必要がある。日常的な対策としてはペットに対するダニの駆除剤等の投与を徹底し、体調不良の際には動物病院を受診することが推奨される。
万が一飼育しているネコなどがSFTSと診断された場合、ウイルスは血液や排泄物から検出されているため、厚労省は糞尿などを処理する際には次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤による処理を感染拡大防止として推奨している。体調不良の動物に接触する際は手袋をつけるなども予防措置も有効になるという。
また、飼育者も発熱や食欲低下、嘔吐、下痢、頭痛、筋肉痛等の症状がでた場合、速やかに飼育者も医療機関を受診し、かつ飼育しているネコがSFTSを発症したことを医師に申告するよう求めている。