古舘伊知郎氏時代の「報道ステーション」(テレビ朝日系)といえば、安倍政権への批判的な姿勢で鳴らした。ところがそんな古舘氏が、当時からは考えられないようなイベントに出演し、一部で驚きが広がっている。
「『東京五輪音頭―2020―』という、新たな音頭が登場いたしますけど、もちろん昔をベースとした......」
丸川五輪相に「平身低頭」と自虐
古舘氏がいつもの名調子を響かせたのは、2017年7月24日、東京・虎ノ門で開催された「東京五輪音頭―2020―」のお披露目イベントだ。五輪組織委会長の森喜朗元首相、丸川珠代・五輪担当相なども出席する中、浴衣姿で司会を担当した古舘氏は、オリジナルの音頭との歌詞の違いを解説するなど、積極的にPRに貢献した。
2004~16年にかけてメインキャスターを務めた「報ステ」で古舘氏は、権力に対して距離を置くスタンスを取った。特に東日本大震災後には、原発問題を積極的に追及するなどし、元官僚の古賀茂明氏のコメンテーター降板時には、古賀氏が官邸からの「圧力」を番組内で主張、議論を呼んだことは記憶に新しい。
五輪に関しても、招致決定直後の放送(13年9月10日)では、安倍晋三首相の「(福島第1原発は)アンダーコントロール」発言にフォーカスを当て、地元や避難者の不安の声を紹介するなど、世間のお祭り騒ぎとは一線を画した。
一方、この日のイベントの古舘氏は、共演したテリー伊藤さんらと一緒に、ステージ上で「音頭」に合わせて踊りを披露したのをはじめ、法被姿の森氏が「節約したから、僕ら浴衣がもらえない」というジョークを飛ばせば笑顔で応じ、テリーさんが「森さん元気ですね」とおだてれば、「元気ですね~」とうなずく。さらに丸川氏も、
「私、テレビ朝日のアナウンサーの後輩なんで、昔偉そうな態度取りましたけど、今日平身低頭なんですよ」
と自虐ネタでヨイショするなど、「報ステ」時代とは打って変わった司会ぶりだった。
狙うは「五輪開会式の司会」?
この様子は古巣の「報ステ」でも紹介され、ツイッターでは、「報ステでこんなイキイキした古舘さん観たの初めてだ」などと面白がる声もあったが、
「『報ステ古舘さん応援!』とか言ってた奴らどう思ってんだろ(笑)」
「報ステやってる時なら、こういったプロパガンダには絶対に参加せず、スタジオで批判コメントしてただろうに」
と、かつてとの落差に冷ややかな声も散見される。
もっとも、古舘氏は以前から、「五輪」に対する思いを繰り返し表明している。2015年12月の降板発表会見で、実況に挑戦したい、と語ったほか、2016年9月のラジオ番組では、「開会式の司会」にも意欲を見せた。