農業の敵アブラムシと共生し、農家を泣かせる
農業の方は被害額が毎年数千億円に達する。農業関係者がヒアリを恐れるのは、農作業中に刺されるだけでなく、農作物に被害が及ぶからだ。特に深刻なのはヒアリに作物の芽が食いちぎられること。さらに、ヒアリは農業にとって害虫であるアブラムシと共生関係にある。ヒアリはアブラムシが出す甘い露を食料とし、代わりにテントウムシなどの天敵からアブラムシを守る。ヒアリとアブラムシが共に増えることで農作物への被害がいっそう拡大する。ヒアリが多い米国南部の州では農作物の品質と生産量が大きく減少したため、米政府は毎年10億ドル以上の補助金の出費を強いられている。
そこで、米政府がヒアリ対策に注目しているのがヒアリの天敵、その名も「ゾンビバエ」(非常に小さなノミバエの1種)という恐ろしい寄生ハエだ。米農務省農業研究局のサンフォード・ポーター博士は、ゾンビバエの専門家だ。
ポーター博士「ヒアリの本来の生息地であるアマゾンでは、生息密度は米国の5分の1から10分の1です。アマゾンにはヒアリの天敵のゾンビバエがいるからです。ゾンビバエを米国でも増やすことができれば、米国をヒアリの被害から永久に救うことができます」