山本大臣の言う提案書とは
加計学園が獣医学部構想を初めて提出してきたのは今年1月12日のこと。今治市の獣医学部特区への公募が締め切られて加計学園のみが応募した直後の「今治市分科会」での会議だった。山本大臣が記者会見で明らかにした「内部での打ち合わせ」が12月末から年始にかけてだとすると、この時期にはまだ提出されていないはずだ。
では山本大臣の言う、両者の提案書とは何を指しているのか。
加計学園と組む今治市が15年6月に開かれたWGによるヒヤリングに提出したのは、2枚の資料だった。「国際レベルの獣医師養成」と「危機管理発生時の学術支援拠点」の2つを柱に掲げるが、具体的な内容がまったく記されていない。とても山本大臣の言う「熟度」を感じさるような構想には思えない。翌年の「今治市分科会」(16年9月)に配布された2枚つづりの資料も同様に具体性は見られない。
議論はこれらの資料を元に交わされているが、委員からも「既存の獣医学部で対応できる話であって、新しい獣医学部をつくる云々、という話はまた別の話だと逃げられる可能性が非常にある気がする」など構想に注文がつけられている。
一方の京産大が16年10月のヒヤリングに示した構想は21ページに及ぶ。既存の大学では対応困難な実験動物学の単位を増やすことや、地元の京都大学が開発したiPS細胞との連携や創薬などのライフサイエンス関係で獣医師が新たに対応すべき分野を示すなど、獣医学部を新設する際に必要だとして閣議決定された4条件を意識したつくりになっている。
獣医でもない私が、両者の提案書の優劣を論じる力量も資格もないが、京産大の21ページと加計学園の2ページの提案書では、構想の具体性などの厚みが違う。この資料を元に、加計学園に軍配をあげたのだとすると理解に苦しむ。
おそらく山本大臣は、加計学園の詳しい構想は12月時点で提出され、それをもとに比較検討したと弁解するに違いない。だが、京産大の具体的な構想はWGによるヒヤリングで議論されているものの、加計学園の構想は、今治市の公募が終わるまで一度も諮問会議やWGで議論されていないのだ。にもかかわらず議論していない加計学園が選ばれるというのは、どう考えても解せない。