クールビズにより、ビジネスファッションが一昔前に比べ多様化し、最近では男性用の「くるぶし」が出る丈のパンツスタイルが百貨店などで並んでいる。
この服装は職場でアリかナシかをめぐり、インターネット上で様々な意見が飛び交っている。「涼しそう」と受け入れる声もあれば、「常識を疑う」と、ビジネスの場では相応しくないという声も出ている。
ユニクロ「くるぶし出して、行きましょう。」
環境省が中心となって2005年に始まり、2017年で13年目を迎えたクールビズ。軽装を促し、男性のビジネスファッションではノーネクタイやノージャケットなどが浸透しつつあるが、いま注目されているスタイルの1つが「くるぶし出し」だ。
百貨店のそごう・西武は17年のクールビズにおいて、「マイナス5センチメートルへの挑戦」というテーマのもと、涼しさとオシャレを両立するくるぶし丈のパンツを押し出している。ユニクロは3月に「くるぶし出して、行きましょう。」のキャッチフレーズでくるぶし丈のパンツを新発売。ユーチューブで公開したブランドムービーでは、これを着こなしたビジネスパーソンが颯爽と歩く姿が描かれている。
日本経済新聞の7月15日付夕刊によると、毎週金曜日にカジュアルな服装を推奨する施策「脱スーツ・デー」を6月に打ち出した伊藤忠商事では、くるぶしを出したスタイルで出社する従業員が増えたという。
こうしたくるぶし出しスタイルに対しては、ツイッター上で意見が分かれた。「涼しそう スーツ着用やめたらいい」「男はスーツ着て働くなんていう悪しき慣習とっとと全廃しろ」といった肯定的な声と、「個人的には仕事中はナシだわ」「常識を疑う。そういう人と仕事をしたくない」という否定的な声が出ていた。
環境省・国民生活対策室の担当者はJ-CASTニュースの7月20日の取材に、「クールビズにおける個別の服装の可否は個々の企業に任せています」と話しており、統一の基準はないという。職場ではどう受け止められているのか。
年代による意識の差、業界による違い
企業研修事業を手がけるスマートコミュニケーションズ(本社・東京都渋谷区)代表取締役でビジネスマナー講師の篠原あかね氏は、J-CASTニュースの20日の取材に「企業の人事担当の方から『くるぶしを出す社員がおり、違和感があるがどうなのか』との相談をここ最近受けます」と話す。許容すべきか否かを判断しかねているそうだ。
「40代以上くらいの管理職を務める年齢層の方々からすると、サラリーマンの身だしなみの常識からは外れた服装だと捉えられるのだと思います。一方、若年層はクールビズが始まる以前のことは知らず、夏場は軽装になるのが当たり前、という感覚。くるぶし出しも違和感がないという方が多いのではないでしょうか。そうした世代間での受け入れの意識の差はあると思います」
業界にもよるという。女性に比べて男性のビジネスファッションの型は「スーツに革靴」が基本で固定的。足元は不快感を与えないようすね毛が見えないようにするのが基本とされているという。そこで、たとえば銀行や保険など従業員が1対1で客の信用を得られるかどうかが重要な業界では「お客からのクレームになりそうな服装は避ける傾向にあります。クールビズとは言え、くるぶしを出すと『カジュアル過ぎる』と印象を持たれ、信用を失いかねません」と篠原氏は言う。
篠原氏は現状として「くるぶし出しがありかなしか、一概には言えません。ですが、かっちりと服装規定が決まっている職場はもとより、オフィスカジュアルを基本とする職場でも当たり前に認められるところは、まだ多くないと思います。『オシャレは自分のため、身だしなみは相手のため』です。ビジネスの場では周りの人にどのような印象を持たれるか考えるのが重要です。年配の方を相手に仕事をする場合は避けた方がいいかもしれません」としている。
ただ、「アパレルメーカーがトレンドとしてプッシュし続けるとか、着ていても特段注意されない職場が増えるとか、そういった状況が続けば、数年後にはクールビズの1つとして当たり前になるかもしれません」と展望していた。