早期発見が難しい「最悪」すい臓がん 血液検査で初期からわかる画期的研究

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   がんの中でも最も発見しにくい悪質なすい臓がんを、発症直後の段階から血液検査で見つける画期的な検査方法が開発された。米ペンシルベニア大学再生医学研究所などの研究チームが米医学誌「Science Translational Medicine」(電子版)の2017年7月12日号に発表した。

   すい臓がんは進行が非常に早いため治療が難しく、早期発見がカギになる。今回の血液検査は従来の方法よりはるかに精度が高いうえ、すぐにでも実用化が可能だという。

  • 血液検査で早期発見が可能に
    血液検査で早期発見が可能に
  • 血液検査で早期発見が可能に

千代の富士やスティーブ・ジョブズを奪った

   すい臓がんは、末期になってから症状が現れるケースが大半だ。「早期発見しにくい」「転移しやすい」「治療が難しい」「生存率が低い」と悪条件が4つもそろい、「最悪のがん」と呼ばれる。国立がん研究センターが2017年2月に発表した統計によると、すべてのがんの「5年生存率」の平均が62.1%なのに、すい臓がんは7.7%と主ながんの中で最も低い。「10年生存率」は4.9%まで下がる。最近では、米アップル創業者のスティーブ・ジョブズさん(享年56)、歌舞伎俳優の坂東三津五郎さん(同60)、元横綱千代の富士さん(同61)らが命を落とした。

   米ペンシルベニア大学医学部などがつくった医療ベンチャー企業「ベン・メディシン」のプレスリリースによると、研究チームは特殊な細胞再生技術を使い、すい臓がんの各段階のがん細胞を再現することに成功した。その方法はこうだ。末期すい臓がんの患者のがん細胞からがん遺伝子を取り出し、幹細胞に植え付けた。幹細胞は、皮膚、赤血球、血小板など体をつくる様々な細胞に分化する元になる細胞だ。また、それらの細胞の寿命が尽きると、失われた細胞を再び生み出して補充する能力も持っている。

   研究チームは、この幹細胞が持つ分化する能力を活用、幹細胞の中の末期がん遺伝子を再プログラムし、がんが進行する時間を巻き戻し、初期段階のがん細胞にさかのぼらせることに成功した。そして、発症直後の細胞から末期のがん細胞まで、様々な進行段階のがん細胞を作り出した。

家族に患者のいる人や糖尿病の人は要注意

   その結果、すい臓がんが進行するすべての過程で、タンパク質「トロンボスポンジン2」(THBS2)が共通して現れることを発見した。そして「THBS2」と、従来からすい臓がんの後期の段階で現れることが知られているタンパク質「CA19-9」(シーエーナインティナイン)を組み合わせて「バイオマーカー」(生体指標)として使うと、あらゆる段階のすい臓がんを一貫して正確に特定することができたという

   同大学再生医学研究所のケン・ザレット所長は、プレスリリースの中でこうコメントしている。

「私たちが開発したバイオマーカーは、従来のどのマーカーより優れた成果を上げました。特に、すい臓がんの早期段階での成績がよく、すい臓がんの前段階のすい炎と初期のすい臓がんを区別する能力を改善することができました。今後、さらに精度を上げる研究を進めますが、現段階でも十分実用化は可能であると考えています。すい臓がんのリスクが高い人々、たとえば家族にすい臓がんの患者がいる人、すい臓がんに遺伝的にかかりやすい人、また50歳を過ぎて突然糖尿病を発症した人は、ぜひこの早期発見バイオマーカーでチェックしてほしいと思います」
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